不足の影響が各業界に広がってきた。政府がその深刻さを受け止めているのか疑問である。

 中東情勢の不安定化に伴い起きている原油由来製品「ナフサ」の調達難により、生活必需品への影響が顕在化してきた。

 ナフサは、プラスチックを作るのに使うエチレンの原料になるなど多くの素材の出発点といえる。

 影響分野が、ごみ袋や衣料品からビニールハウスのような農業用資材まで幅広いため、社会への打撃が心配だ。

 不動産業界では、建築資材の供給不安を背景に、新築マンションの引き渡しが遅れる可能性が出てきた。ナフサを原料とする溶剤や塗料の供給が不確実であることを理由に挙げている。

 日本塗装工業会の本県支部も、塗料用シンナーなどの安定供給や資金繰り支援を求める要望書を知事宛てに提出した。原材料高騰分を適切に価格転嫁できるかも課題になってくる。

 要望の中で、流通の実態把握を国に働きかけるよう求めたのは、もっともだ。

 政府はナフサについて「日本全体としては必要な量は確保されている」と強調する。

 だが、食品業界でも包装用の印刷インキの供給が不安定になっているとして包装の簡素化を検討せざるを得なくなっている。これもナフサ不足に起因するものだ。

 市中の窮状が政府から見えていないのではないか。

 2024年夏のコメ不足後の記憶がよぎる。政府が流通実態や需給見通しを十分に把握できていなかったことが混乱を招いた。

 ナフサでも実態と政府認識になぜ隔たりがあるのか。各業界の懸念を払拭するには、「支障がない」とする根拠を政府が説明することが不可欠である。

 高市早苗首相は、経済活動にマイナスとなる節制の呼びかけには一貫して否定的だ。

 ガソリンを節約する政策を国会で求められても「国民に踏み込んだお願いをする段階にない」とし、「経済を回していかなければならない」と反論した。

 求められるのは、自らが掲げる「強い経済」にこだわることではない。調達難に適切に対処してもらいたい。

 政府は夏の電気・ガス代の補助を検討しているとみられる。冷房需要が高い7~9月を念頭に家計の負担を抑える。

 電気・ガス代への補助金は、ロシアがウクライナに侵攻して以降、需要が高まる夏と冬に繰り返されてきた。今夏も中東情勢の悪化に伴い料金の値上がりが避けられない見通しが示されている。

 補助は高騰対策になる一方、エネルギー消費を促しかねない。

 原油供給の不安定さが続いても日本が耐えられるのか。長期的な展望に立った施策が必要である。