人工知能(AI)関連など一部企業の成長を期待したものだろう。国民の生活実感とはかけ離れていると言わざるを得ない。
13日の東京株式市場の日経平均株価(225種)終値は6万3272円11銭を付け、終値として最高値を更新した。
初めて6万円を超えたのは4月27日だった。昨年10月に5万円を突破してから、わずか半年の間に急ピッチで到達した。
中長期的に成長が見込まれるAIや半導体関連銘柄が買われ、全体を押し上げた。偏った銘柄に投資マネーが流れ込んだ格好だ。
大手企業の3月期決算の発表が本格化し、堅調な業績や見通しを示した銘柄が押し上げている側面もある。必ずしも中小企業や国民の暮らしに明るさが見えているわけではない。
株価は当面、高値圏で値動きするとの見方がある。その背景に、米国とイランの戦闘終結に向けた協議の楽観論があることは見逃すことができない。
両国は4月上旬に即時停戦に合意したが、イランの核問題を巡る溝が埋まらず、停戦維持が危ぶまれている。
協議が長期化したり、決裂したりすれば、原油不足や経済停滞の恐れがさらに高まる。過度な期待は危うさをはらむ。
気がかりなのは、株式市場の活況と、国民生活の実態との隔たりが大きいことだ。
3月の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は33万4701円だった。前年同月比2・9%減で、4カ月連続のマイナスだ。物価高で食料品を中心に買い控えが起きた。
家計の消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は2025年度に28・8%と、45年ぶりの高水準となった。支出に占める食料品の割合が高くなる低所得者への打撃が鮮明となっている。
昨年10月の高市早苗政権発足で、株高、円安、債券安の「高市トレード」が起き、円安は物価高を加速させた。
大型連休中も政府、日銀は円買いドル売りの為替介入を複数回、実施したとみられ、介入は10兆円規模に上る可能性がある。しかし、効果は限定的で、連休明けには円売りの動きが先行している。
国債は米長期金利が上昇したことなどから売られ、13日には長期金利の指標である新発10年債の利回りが上昇し、一時は約29年ぶりの高水準となった。
長期金利の上昇は住宅ローン金利の負担増につながりかねず、生活を圧迫する。
円や国債を買いづらい状況の背景には、高市政権が進める積極財政政策への根強い懸念がある。
株高がどれだけ進んだとしても、円安と債券安を是正しなければ、国民が暮らしの豊かさを実感するのは難しい。
