大川博賞受賞を記念して講演する岩井澤健治=2月、新潟市中央区

 2月25日、第4回新潟国際アニメーション映画祭のフィナーレを飾る表彰式。6日間の会期を満喫した高揚感に包まれる中、国内外から集まったクリエーターやアニメファンらが壇上を注目していた。

 優秀な制作スタジオに贈られる、新潟市西蒲区出身で東映動画を創設した人物の名から付けた「大川博賞」。受賞したのはスタジオ「ロックンロール・マウンテン」だ。代表取締役で今話題のアニメ映画「ひゃくえむ。」監督の岩井澤健治(45)が、トロフィーを受け取り、あいさつした。「スタジオになって2年半。もう一度この賞をいただけるよう頑張ります」

 岩井澤が新潟の映画祭に来るのは3年連続3度目だ。過去2回は上映兼トークショーの企画に呼ばれた。

「ひゃくえむ。」(C)魚豊・講談社/『ひゃくえむ。』製作委員会
<ひゃくえむ。>陸上競技100メートル走に全てを懸けた男たちの情熱と狂気を描いた物語。実写をなぞる「ロトスコープ」の臨場感のほか、声優に俳優の松坂桃李、染谷将太らを起用し、話題を集めた。世界最大規模のアヌシー国際アニメーション映画祭(フランス)で2025年6月に初披露した後、国内では9月からロングラン上映が続いている。県内のシネマコンプレックスでも上映された。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞。原作は魚豊の同名漫画。

 それが、今回はこれまでと違う形で、しかも、より脚光を浴びる立場で新潟を訪れた。さまざまな映画祭に呼ばれる岩井澤だが、「新潟とは縁を感じる。これからも協力できることがあれば協力したい」と話す。

 岩井澤は若い頃、実写映画を自主制作していたが、完成させられず挫折を味わうこともあった。同世代の才能を目の当たりにし、「勝負できない」と思った。

映画祭会場の一つの古町地区に立つ岩井澤健治=2月、新潟市中央区

 映画とは関係のない会社に就職するも、監督になる夢は捨てられなかった。葛藤する中、心に浮かんだのは、絵を描くことが好きで、漫画家が夢だった幼少期の記憶。「アニメは実写よりライバルが少ない。働きながらでも一人で作れる」とアニメに転向した。

 2008年、デビュー作の短編が複数の映画祭で賞を獲得。「アニメでやっていける、続けていいんだって背中を押してもらえた」

新潟国際アニメーション映画祭の会場近くに立つ岩井澤健治。「新潟映画祭は3回目。縁を感じている」=2月、新潟市中央区古町地区

 その後、長編にも挑戦し、7年半かけて4万枚超を手描きした映画「音楽」を20年に発表。オタワ国際アニメーション映画祭(カナダ)でグランプリを獲得するなど高評価を受けた。映画祭とは何か-。岩井澤は言う。「自分に自信を与えてくれる場所」と。

「成長し、また帰ってくる」濃密な交流、若手の刺激に

LOCA!監督・うったまーの思い

アニメーションを学ぶ学生らの質問に答えるうったまー(中央)=2月、新潟市中央区

 「これ見てください」。第4回新潟国際アニメーション映画祭が閉幕した夜の打ち上げ会場。コンペティションに参加した監督・うったまー(23)は憧れの映画監督・岩井澤健治(45)の隣に陣取り、自身の作品を見せた。夜更けまで酒を酌み交わしながら、セル画と背景の描き方の違いなどアニメについて語り合った。

 若手に教える立場になったと自覚する岩井澤。自身の経験を伝えていきたいと思う一方で、...

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