水俣病が公式確認されてから70年となり、犠牲者慰霊式で黙とうする参列者=1日午後、熊本県水俣市
水俣病が公式確認されてから70年となり、犠牲者慰霊式で黙とうする参列者=1日午後、熊本県水俣市

 水俣病が公式確認されてから70年となった1日、熊本県水俣市で犠牲者慰霊式が営まれ、患者や遺族らが追悼の祈りをささげた。患者・遺族の代表は「次世代に教訓として伝える」と述べ、参列者らは「公害の原点」とされる悲劇の再発防止を誓った。石原宏高環境相は4月30日から2日間にわたり被害者団体と懇談したが、前年までと同様、団体側が求める患者認定制度の見直しなどに進展はなく、改めて隔たりが浮き彫りになった。

 被害者の声に耳を傾け、被害の実態を調査してほしい-。1日まで2日間、熊本県水俣市で行われた石原宏高環境相と水俣病被害者団体との懇談。被害者側は、公式確認から70年を経ても救済が進まない原因の一つに、住民健康調査が十分に行われてこなかったことを挙げた。環境省は本年度中に不知火海(しらぬいかい)沿岸で健康調査を始める予定だが、手法を巡って被害者側が反発。溝は埋まらなかった。本県では実施のめどすら立っておらず、関係者は「時間がない」といらだちを募らせる。

水俣病被害者団体と懇談する石原宏高環境相(右手前から3人目)=1日、熊本県水俣市(代表撮影) 

 「大臣は教訓を世界に発信していきたいと言うが、被害の実態も調査しないで何を発信するのか」

 水俣病被害者互助会会長の佐藤英樹さん(71)は石原環境相に訴えた。

 佐藤さんは行政認定を求めた訴訟の福岡高裁判決で訴えを棄却された。判決は水俣病の罹患(りかん)の立証は原告側が行わなければならないとしたが、佐藤さんは立証のための調査を十分にやってこなかったのが行政だと主張。「被害者に向き合う経験こそ教訓とすべきではないのか」と投げかける。

 健康調査は2009年の水俣病特別措置法で国による実施が明記されたが、いまだ行われていない。被害者団体は健康調査で被害の広がりが明らかになれば、取り残された被害者の救済につながると期待し、早期実施を求めてきた。

 2年前、環境相との懇談で被害者の発言が遮られた問題があって以降、国は調査の実施を表明。有識者による検討を経て採用されたのが、従来の診察に加え、脳磁計などによる検査を組み合わせる科学重視の手法だった。環境省は25年度に試験的調査を行い、26年度から複数年かけて千人規模の調査を始める。

住民健康調査を巡り意見を交わした石原宏高環境相と被害者団体の懇談=4月30日、熊本県水俣市

 これに対し、被害者団体は「数万人以上の規模で被害の大きさを明らかにすべきだ」と批判。水俣病不知火患者会副会長の森正直さん(75)は「時間がない。どうやって患者を救うかを考えないと意味がない」と訴えた。

 石原環境相は「意見が合わないところもあるが、すり合わせて調査を進めたい」と述べるにとどめた。

 一方、本県での健康調査は実施のめどすら立っていない。環境省特殊疾病対策室は...

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