なんだかいつもより暗い。会場入り口はここでいいのだろうか。新潟市美術館の企画展「戦後80年 戦争と子どもたち」を訪ね、真っ暗な通路から展示室に入った。目に飛び込んできたのは無邪気に遊ぶ子どもたちの絵だった

▼戦中から戦後間もない頃に描かれた子どもたちは、画家の目を通した当時の社会情勢を映し出す。戦況が進むにつれて笑顔は消え、明日が見えない不安を代弁するかのようにうつむく。やがて勤労奉仕などで総力戦を支える「少国民」となっていく

▼幸せなはずの母子の光景も、戦時のあるべき姿として表現された。作品「別れの乳房」には、駅のホームで授乳する従軍看護師が描かれる。兵士の出征を祝って日の丸を掲げる人々を背に、母はただわが子を見つめ、赤ん坊もまた母を見上げる。愛児を残し戦地へ赴く女性も少なくなかった。そして多くの看護師が殉職した

▼終戦後は戦災孤児の痛ましい姿が描かれる一方で、笑顔の描写も戻ってくる。戦時から一転、今度は復興の象徴として希望を託された。戦争とは何なのか、絵の中の子どもが無言で問いかけてくるようだ

▼展示の最後にあったのは、照明のない空間に椅子が1脚だけ置かれた「ひとりの部屋」。じっと静かに過ごしても、問いかけを受け止める時間にしてもいいのだろう

▼今なお戦下に生きる子どもたちは、どんな眼差(まなざ)しをしているだろうか。絵の中の表情を重ねてみる。子どもたちが、ただ子どもとして笑える世にしていかなければならない。