週末から気持ちの良い晴天が続いている。ことさら暑くもなく寒くもない。新潟では貴重だ。青空の下で清涼感ある新緑に癒やされる。遠い山並みには残雪が光る。初夏の風景に溶け込むように農作業にいそしむ人々を、至る所で見かけた
▼田植え機に乗る人、苗箱を運ぶ人。トラクターで田打ちをしている圃場(ほじょう)もあれば、あぜで除草剤を噴霧する姿もある。地域により工程に差はあっても、それぞれの営みが日本の食を支える
▼見慣れた景色とはいえ、この時季、新潟が農業県であることを実感させられる。広大な平野部も盆地や傾斜地が広がる中山間地も、県土の多くは農地からなる。農業従事者は年々減りゆくが、勤め人も学生もこの風景の中で暮らしている
▼代かきを終えた農地は静かな水鏡となる。植えられた苗が伸びるまでの限られた期間ながら、連なる水田が夕焼けを映し出すぜいたくな光景にも立ち会える。冬場にうんざりするほど降った雪が、その豊かさの源なのだから感慨深い
▼會津八一の短歌に思いを巡らせる。〈わがともよ よきふみつづれ ふるさとの みづたのあぜに よむひとのため〉。本紙夕刊へと続く「夕刊ニヒガタ」の創刊号に、社長として掲載した歌だ。創刊はちょうど80年前の5月だった
▼みづたは水田であり、今と同じ初夏の景色が連想される。田んぼのあぜで新聞を読む市井の人々に向けて良い記事を書こうと、八一は同人に呼びかけた。本紙は幾度となく紹介してきた。色あせない道標である。
