スポーツの世界に「もし」を持ち込むのはよくないかもしれない。それでも考えてしまう。もし違う時代にプレーしていれば、日本人男子初の世界1位の座も夢ではなかったのではないか
▼今季限りでの引退を表明したテニスの錦織圭選手がデビューしたのは2007年。フェデラーとナダルの両選手がテニスの4大大会のタイトルを分け合った年だ。その後、ジョコビッチ、マリーの2選手を加えたトップ4人による「ビッグ4」が君臨する時代が続いた
▼錦織選手は4人に食らいつき、15年に世界ランキング4位にまで上り詰めた。4大大会の一つ全米オープンで、日本人男子として初めて準優勝を果たしたほか、リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得した
▼5セット目までもつれるような長時間の試合で真骨頂を発揮した。5セットマッチの勝率は男子のトップクラスだ。最後まで諦めない姿勢にいつも見入った。惜しむらくはけがが多かった。けがさえなければ、ビッグ5として数えられていたに違いない
▼憧れだったフェデラー選手は、22年に41歳で引退を表明した。錦織選手は36歳。もう少しプレーする姿を見たかったが、引き際は本人にしか決められない
▼男子車いすテニスでは第一人者だった国枝慎吾選手の引退後、その背中を追ってきた小田凱人選手が世界の頂点に躍り出た。トップ選手への憧れが次代を担う子どもたちを強くする。錦織選手が打ち立てた日本人男子初の記録の数々が、塗り替えられる日が待ち遠しい。
