島本理生さん
 島本理生さん

 「悲しみを背負うと、口は重くなります。独りで抱え込んで、言葉を閉じ込めている人にも、今回の小説が届いたらいいなと思います」。作家の島本理生さんがそんな願いを込めた新作「ノスタルジア」を刊行した。痛みを伴う過去を手放し、今を生きることへと向かっていく再生の物語だ。

 40歳を迎える作家の紗文は大切な人との別れから5年間、小説を書けずにいた。そんな折、独り暮らしの部屋に創という若者を居候させることに。創は宗教2世、母親は殺人事件の加害者だった。

 同居して互いを知り始めた頃、紗文は不思議な出来事に遭遇する。自分が選んだ現実と、自分ではどうしようもない過去。そんな「分岐点」を痛感するような体験だ。記憶のふ...

残り552文字(全文:851文字)