イラストはデジタル・グラフィックスセンター・飯田夢奈
イラストはデジタル・グラフィックスセンター・飯田夢奈

 「体育館は蒸し風呂のよう。体育館でもエアコンを使えないのでしょうか」。早々に梅雨が明けて暑い日が続く中、中学生の娘が卓球に取り組む新潟県下越地方の保護者から新潟日報の「もっとあなたに特別報道班」(もあ特)に切実な訴えが寄せられた。調べてみると、県内で競技スペースに冷房を備えている屋内施設は少ない。現状では室温を上げない工夫とこまめな水分補給が必要のようだ。(報道部・黒島亮)

 この保護者によると、昨夏、中1だった娘が、県内の体育館で行われた競技後に気分が悪くなった。胃腸の調子を崩して通院し、しばらく夏バテのような食欲不振が続いた。一緒に参加したメンバーには、頭痛になり途中で帰宅した生徒もいた。

 競技フロアにはエアコンがあったが、冷房は作動していなかったという。

 保護者は「昔とは違う暑さなのに、根性論で我慢させるのだろうか。関係者は熱中症を予防するための環境を整えることが必要ではないか」と話し、冷房のある施設では冷房を使い、ない場合でも十分な暑さ対策を講じるよう求める。

◆「冷房あり」2〜3割か

 県の施設では謙信公武道館(上越市)やダイエープロビスフェニックスプール(長岡市)などの大型の屋内施設に冷房がある。新潟市によると、市の施設で競技をするフロアに冷房を備えているのは、市体育館(中央区)や豊栄総合体育館(北区)などにとどまり、「全施設の2〜3割ではないか」(担当者)という。

 新潟市の施設の場合、大会などで貸し切り使用する時に冷房を使う際は、通常の使用料とは別にお金がかかるケースが多い。

 県と新潟市の教育委員会によると、県立、新潟市立の学校で冷房完備の体育館を持つ学校はないという。

 県内のある教育関係者は「熱中症対策として、これまでは教室などへのエアコン設置を優先的に進めてきた」と説明。体育館への設置については「今後の検討にとどまる」という。

◆水分補給の呼び掛けも

 冷房がない施設での競技や練習環境で気を付ける点は何か。

 長岡崇徳大学の加固正子教授(小児看護学)は「窓を2カ所以上開け、館内の空気を流れるようにすることが必要」と話す。

 熱い空気がこもりがちな天井に近い窓を開けるのも有効だ。室温が上がるのを抑えるため、太陽の方向の窓は遮光カーテンを閉めるといい。

 風通しをよくすることは、新型コロナウイルスの感染対策の観点からも有効だ。冷房のある施設でも換気が望ましい。

 仮に設備があってもエアコンの風がプレーに影響する競技もあり、一律の使用の難しさを指摘する競技関係者もいる。ただ、日本バドミントン協会の広報担当者は「会場の風の流れが弱く、風向きが一定の方向であればエアコン使用を容認している」と話す。

 加固さんは「新潟は気温だけでなく湿度も高い日が多く、熱中症の危険が高くなりがち。養護教諭らを交えて、運動して大丈夫かどうかを判断することが大切」と指摘。併せて、「練習中や試合中に教員らが『みんなで水を飲みましょう』と呼びかけることも重要」と話した。