スーパーの店頭に並ぶアイラップ=新潟市中央区幸西1の原信南万代店
スーパーの店頭に並ぶアイラップ=新潟市中央区幸西1の原信南万代店

 野菜の保存や料理に、小物やごみの持ち運びにと便利に使えるポリ袋。中でも、オレンジ色で三角形のパッケージの「アイラップ」は、県内のスーパーやドラッグストアでよく見かける。そんな印象的な商品が、「新潟県にしかない!?」「売り上げの大半を新潟県が占めている!?」とのうわさを耳にした。記者がうわさの真相に迫った。

 「アイラップ」は、岩谷マテリアル(東京)が製造。1976年、日本初の家庭用箱入りポリ袋として、全国に売り出された。耐熱120度、耐冷マイナス30度で冷凍や湯せんも可能だ。

 新潟日報社の「もっとあなたに特別報道班」では、通信アプリLINE(ライン)によるアンケートを実施。回答のあった143人中、約92%がアイラップを「知っている」、約77%が「使っている」と答えた。「もう何十年も使い続けている」(60代女性)「いろいろ使える万能ツール」(50代女性)など、機能性も評価され、長く愛用されている様子がうかがえた。

 新潟市中央区のスーパー「原信南万代店」でももちろん、アイラップは並んでいた。運営するアクシアルリテイリング(長岡市)の担当者が「価格が安いプライベートブランドのポリ袋もある中、ダントツの売り上げ」と話すほど人気のようだ。

スーパーの店頭に並ぶアイラップ=新潟市中央区幸西1の原信南万代店

◆お裾分けや漬物文化が関係か

 うわさについて、岩谷マテリアルに尋ねると、出どころと考えられたのは、「アイラップ公式」として2018年に発信したSNSのつぶやき。「売上の75%が新潟、山形、富山、石川、福井に集中している」と投稿したのだ。

 各種メディアで取り上げられ、全国的な知名度が上昇。22年ごろには、関東エリアの売り上げシェアが日本海側5県を逆転した。ただ、岩谷マテリアルは「実際の数字は分からないが、日本海側の方が普及率は高いのでは」とみる。

 なぜ新潟県など5県でそれほどの売り上げがあったのか。岩谷マテリアルによると、発売から10年で実用新案の権利が切れ、類似品との価格競争によって販売エリアが縮小。そんな中でも、山形県の大手スーパーが継続して取り扱い、岩谷マテリアルの営業担当が他県にも力を入れたことで、次第に北陸地方に広まったのではないかという。また、北陸地方は、料理のお裾分けや自宅で漬物を作る文化があり、重宝されたのではないかとも推測した。

◆災害食「ポリ袋調理」に注目

湯せんでも対応可能なアイラップ。近年注目されるポリ袋を使った調理でも活用される

 近年、災害食として食材をポリ袋に入れて湯せんする「ポリ袋調理」が注目を浴びている。新潟県のように自然災害の多い土地柄にアイラップ人気の秘密があるかもしれないと考え、防災士で管理栄養士でもある土田直美さん(59)=長岡市=に聞いた。

 土田さんは「ポリ袋は洗い物を少なくするなど、災害時にも役立つ」と太鼓判を押す。ただ、04年の中越地震、07年の中越沖地震の際にはポリ袋を調理に活用するのはなかった動きだと思われると指摘。「県内では、11年の東日本大震災後あたりからポリ袋調理が広がり始めた」と証言する。新潟県で起きた災害を機に需要が増えたわけではなさそうだ。

 結局、新潟のアイラップ人気の理由ははっきりしなかったが、岩谷マテリアルの坂本英明デジタルコミュニケーションシニアマネージャーは「新潟の方々には長年使ってもらいありがたい」と感謝する。「災害時も...

残り145文字(全文:1457文字)