人口減少が農業や観光、医療福祉にも影を落とす地域に、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけています。衆院選を迎え、地域の実情や住民の思いを伝える連載「知ってほしい」を展開します。今回のテーマは「娯楽の大切さ」です。

 「世界に実際にある変わった地名といえば?」「マルデアホ!」。

 新潟市中央区の西堀ローサにある「まちなかステージよろっtoローサ」で7日、新潟お笑い集団NAMARAの高橋なんぐさん(40)と金子ボボさん(44)が軽妙なトークを繰り広げ、客は笑い声を響かせた。

 まちなかステージは9月中、感染拡大の影響でイベントを取りやめていた。10月に入り、感染者数が落ち着き始めたことから、催しの一部を再開。7日に久しぶりに来場したという市内在住の無職男性(48)は「休館中はさみしかったが、再開してすごくうれしい。日常が戻って来た感じがした」と喜んだ。

 ウイルス禍の下、政府は「不要不急」の活動や「3密」を避けるよう国民に繰り返し訴えてきた。新潟市内のお笑い関係者はこれまで、催しを自粛するなど感染防止に力を尽くしてきた。感染者が減り続けている今、ファンからは「再びお笑いや芸能を楽しみたい」との声が高まりつつある。衆院選を前に、関係者は「街を明るくするため、政治には何ができるか考えてほしい」と訴える。

 ウイルス禍で世の中が暗いときこそ、お笑いで明るくしたい-。そんな思いが、お笑い芸人たちにはある。高橋さんは、感染防止を求める政治家に理解を示しつつも「お笑いを求めている人もいる」と語る。「政治家は、(催しを)できない理由を語るだけでなく、どうやったらできるかを考えてほしい」と求める。

 まちなかステージは2011年にローサ内にオープンした。以来、40人ほどが入れる小さな会場ながら、地元の身近な芸人や演奏家らがさまざまなイベントを開催。「障害者の性」や、心と体の性が一致しない「LGBT」など、取っつきにくいテーマも取り上げ、NAMARAなどの芸人たちが、笑いを交えて市民の理解を広げてきた。

 まちなかステージ店長の森下英矢さん(40)は「古町には、1人で不安な暮らしをしている人が少なくない」と言う。感染禍により、このステージなどでの交流が途絶えてしまうことで、さらに孤独に追い込まれてしまうのでは、と心配する。

 ステージには感染防止のためのアクリル板を設け、検温センサーも置いた。「客が安全に楽しめるよう肝に銘じているが、政治家の目線が自分たちに向いていないなら、むなしくなってしまう」と森下さん。

 これまでの政府の取り組みを見て「自粛を求めるのは、国民のためではなく東京五輪を開催するためだったのでは」と思うこともあった。だからこそ政治家には、市民が何の心配もなくお笑いを楽しめるよう、市民に寄り添った政治を求めたいと思う。

(報道部・田中伸)

◎もっと市民の目線で

森下英矢さんの話 新型コロナウイルス禍が続き、気がめいっている人は少なくありません。お笑いはストレスを解消し、免疫力も高めます。政府は感染対策を国民に強いるだけでなく、市民にもっと目を向けた施策をお願いします。