31日に投開票される衆院選で、新潟県内6小選挙区は新潟2区を除く五つの選挙区で、自民党公認候補と立憲民主党、共産党を中心とした野党共闘候補の対決が軸となっている。ほぼ同様の構図だった2017年の前回選では自民が2勝4敗と野党側に負け越した。巻き返しが至上命令の自民は、防衛などで考え方に隔たりがある立民、共産の連携を「野合」と批判するのに躍起となっている。一方の野党側は前回選よりも連携が深まったとの手応えを強調するが、内部には葛藤もあり、一枚岩で戦い抜けるか不安を抱える。

◆自民 危機感募らせ攻撃姿勢

 20日、新潟市中央区のJR新潟駅万代口。自民公認候補の街頭演説に、党をまとめる甘利明幹事長が駆け付け、マイクを握った。

 「衆院選は政権選択選挙。共産党が(政権の一角を占め)政府の意思決定に加わっていいのですか」

 このフレーズを何度も繰り返しつつ、8分ほどの応援演説のほとんどを、安全保障などを巡る共産の政治姿勢や政策を批判するのに費やした。

 県内小選挙区のうち五つでは、立民、共産などが野党共闘態勢を敷いている。甘利氏に先立って演説した自民候補も、冒頭で「自民と公明党の連立政権を前に進めるか、立民、共産に(政権を)渡すのかが問われる」と声を張り上げた。主要な争点として、選挙戦を通して訴え続けるという。

 自民がこうした主張を徹底するのは、野党共闘に対する恐れの裏返しとも言える。

 本県の自民は、全国的に大勝した17年の前回選でも劣勢となった。16年の参院選、知事選でも野党共闘候補に連敗するなど、その脅威は骨身にしみている。

 新潟日報社などが電話調査を基に探った県内小選挙区の序盤情勢では、今回も自民にとって厳しい状況がうかがえる。自民候補と野党統一候補がぶつかる5小選挙区のうち、二つは野党側がリードし、三つは接戦になっている。

 ある自民県連幹部は「(選挙区で)全敗する可能性だってないとは言えない。それだけの大接戦になる」と切迫感を語る。

 県連の小野峯生幹事長は、自民支持層を固めた上で、どれだけ無党派層に食い込めるかが勝敗の鍵を握るとみる。県連としても、野党共闘への批判を前面に訴える考えで「すべては各候補を中心とした今後の活動次第だ」と力を込める。

 一方、唯一、野党側が分裂したことで、自民候補が優位に立つ情勢の2区についても、陣営は内部で緩みが出ないかを懸念する。

 19日に柏崎市で行われた自民候補の出陣式。2区選対本部長の柄沢正三・自民県連筆頭副会長は「僅差の勝負になる」と強調し、引き締めた。

◆野党 「一枚岩」なるか不安も

 衆院選公示を3日後に控えた16日、新潟市中央区の街頭で、衆院選での野党共闘を印象付ける光景が見られた。立憲民主党、共産党、社民党などの新潟市議らと、野党の支持団体幹部らが一堂に会した。

 マイクを握った政党関係者は「自公政権の政治を切り替えるため、野党で協力して政権交代を実現しよう」などと強調した。参加者の一人は「4年前の前回選では見られなかった光景だ」とうなり、共闘の“深化”に手応えを感じていた。

 県内では2016年参院選での統一候補勝利を皮切りに、野党が共闘態勢で国政選挙に挑み、政権批判票をまとめて勝利してきた。今回もこれまでの戦いを再現しようと、5小選挙区で候補を一本化し、野党共闘の枠組みを維持する。

 共闘が奏功してきた要因の一つには、かつて県内のほぼ全小選挙区に候補を擁立してきた共産が、候補を出さないという形で側面支援していることがある。共産候補が近年、各選挙区で得てきた約1万~2万票が、野党統一候補に上積みされるようになった。

 共産は今回も2区以外で共闘に乗った。共産県委員会の樋渡士自夫委員長は「候補一本化に向けて各党が水面下で相談を重ねてきた。政策の合意も前回選より深まっている」と語る。

 ただ、2区では候補擁立を目指す共産と国民民主党が譲らず、前回と同じく一本化できなかった。新潟日報社などの序盤情勢調査では、両党の候補が野党支持層を分け合い、自民候補にリードを許している。

 一方、野党共闘を実現した候補の陣営内にも、共産を含む枠組みへの不安感が漂う。立民の最大の支援団体、連合が、かつて労働運動で対立し、目指すべき社会像などが異なる共産との連携に消極的だからだ。

 野党系候補の選対幹部は「共産に必要な場面で手伝ってもらうのはいいが、前面に出られれば連合のモチベーションが下がる」と苦労を語る。連合新潟の牧野茂夫会長は「共産とは一定の距離感を保ちながら、候補を支援していく」と話しており、一枚岩で戦えるかが焦点になりそうだ。