31日投開票の衆院選は後半戦に入り、各陣営はそれぞれの支持層を固め切ろうと、後援会や地方議員らが総力を挙げて取り組む。各政党の支持基盤として、候補者の活動を支えたり、票をまとめたりしているのが、業界団体や労働組合だ。ただ近年、こうした団体の活動量には温度差があり、どこまで集票力を発揮するのかが読みにくくなっている。さらに今回の衆院選は新型コロナウイルスの流行で短期決戦となり、組織の結束が難しい状況になっている。新潟県内の農業、建設業、連合の3団体の動きをまとめた。

◆JA 自民支持も対応に差

 県内JAグループの政治組織「県農政刷新連盟」(県農政連)は10月上旬、「与党保守系を推薦する」と方針を決めた。これを受け、県内6小選挙区の自民党候補と順次、政策協定を結び、推薦状を出した。

 県農政連の会長を務める県農協中央会の伊藤能徳(よしのり)会長は、推薦理由について「政策の継続性を重視した」と語る。今秋は新型ウイルス流行による需要減の影響で米価が急落。コメの需給調整は喫緊の課題として、各候補者に強く要望した。

 県農政連は2017年の前回選で、当時の安倍政権が推進していた農協改革や環太平洋連携協定(TPP)への不満があり、自民候補を推薦せず自主投票とした。長年、自民支持を打ち出してきた農業団体としては異例の判断だった。

 今回、県農政連は自民支持を決めたが、各地域JAの対応はまちまちだ。県内選挙区は与野党で接戦を展開しているため、両にらみの向きもあるようだ。

 上越市のJAえちご上越は、与野党両方の候補に推薦状を出した。関係者は「さまざまな立場の農家がいるので、中立の立場で臨む」と対応の難しさを語る。

 野党の立憲民主党が、農家の「戸別所得補償制度」復活を公約に掲げたことも、組織や農家の判断に影響を及ぼしている。専業農家の80代男性は「復活してもらわないと農業が続けられない」と切実だ。

 さらに、大規模化した生産者がJAから自立しつつあることが、組織力の弱体化につながっている可能性もある。中越のJA幹部は「県農政連の方針に農家が従うかどうか。結局は個々の判断だ」と打ち明けた。

◆建設業 大集会開けず戸惑い

 公共事業が増えることで恩恵を受ける建設業はかつて、政権を担う自民党最大の集票マシンと呼ばれた。しかし、本県の自民前職は「自民の支持母体の業界団体は、(組織を)引き締めようと言っても昔みたいに動かない」と明かし、建設業も例外ではないとみる。

 下越地方の建設会社社長は、若者の意識の変化を感じる。「個人の考えが尊重される時代。トップがこうしろと言っても従うかどうか」と打ち明ける。かつてはチラシ配布なども手伝ったが、最近の活動は集会への参加と投票の呼び掛けにとどまるという。

 こうした実態の中、さらに活動を鈍らせたのが新型ウイルスの感染拡大だ。

 公示直前、県建設業協会の植木義明会長は「これまでの選挙では大きな集会で気持ちを高めることができたが、今回は開催が難しい」と、手探りの選挙戦に戸惑いをにじませた。

 さらに、新潟市の建設会社社長は、解散から投開票まで戦後最短となった短期決戦の影響を指摘する。「とにかく準備不足。人員態勢は走りながら決めていく」と焦りを見せた。

 組織票を固めるのは「結局は候補本人の実績」と解説するのは、自民のベテラン県議だ。「仕事をして顔が見えれば、団体の動きも変えていくことができる」と力を込めた。

◆連合新潟 「一体感の薄さ」懸念

 立憲民主党などの最大の支援組織で、県内の労働組合からなる団体「連合新潟」は、今回五つの小選挙区で立憲民主党や国民民主党の公認候補を推薦した。各候補の選対組織に人員を派遣し、選挙活動を手伝うなど協力している。

 連合新潟は31の産業別労働組合(産別)で構成され、10万人を超える組合員が加盟している。推薦した新潟1~4区と6区の候補の陣営で、電話による投票依頼やポスターの手配などの支援をしている。

 2017年の前回選は、公示前に旧・民進党が分裂したことを受け、推薦候補の大半が小選挙区で負ければ、比例代表で復活できない無所属だった。連合新潟の小林俊夫事務局長は「緊張感で(各労組が)まとまっていた」と振り返る。

 一方、今回の衆院選では「一体感が薄い感じがある」と懸念する。各産別の支援する政党が立民と国民に分かれていることの影響とみられる。実際に、一部候補には産別の中央レベルから推薦が出ず、県組織が人員を出せていないという。

 さらに、組合員の数が減っている上、時代の変化によって以前よりも組合員から選挙活動への協力が得られにくくなっている可能性も指摘されている。

 小林事務局長は「組合員に丁寧に政治問題について説明し、理解してもらうことが重要だ」と話している。