性依存症と診断され、通院していた時の資料を読み返す吉田彰史さん=仮名=
性依存症と診断され、通院していた時の資料を読み返す吉田彰史さん=仮名=

【2021/09/29】

 何度となく女性を盗撮した。付いた診断名は「性依存症」。「犯罪者が何を、と言われるかもしれない。でも、すごく苦しかった」。県内に住む吉田彰史さん=仮名=は打ち明ける。

 初めて盗撮したのは、多くの女性が買い物に訪れる商業施設。たまたま立ち寄っただけで、理由ははっきりしない。ただ「できそうだと思い、やったら成功した。『すごい、写ってる』という驚きがあった」。

 以来、繰り返すようになった。性的欲求というより、やり遂げた達成感を求めていた。仕事終わりなど、気分を切り替える時が多かった。「作業みたいになっていた。取りあえず撮ろう、と」。妻の顔も、その時は頭に浮かばなかった。

 当時の勤務先では負担が集中し、トラブルが起きても責任追及の矛先は自分に向かった。「なんで俺ばかり」と、いらだちながら抱え込み、帰りが日付をまたぐこともあった。友人と会う機会も減った。

 盗撮をやめたい気持ちはあったが、止まらなかった。「そういう行為でしか、喜怒哀楽の『喜と楽』を感じられなくなっていた」。自分でも数え切れないほど続けた後、逮捕された。

 仕事がつらい人が皆、盗撮するわけではない。省みると、吉田さんには「全て自分で何とかしなければ」という強迫観念があった。人に頼ればよかったのに、弱さを見せられない自分がいた。心の根っこには女性を下に見るような、ゆがんだ考えもあった。

 それらに気付けたのは県外のクリニックで診断を受け、治療を始めてからだ。

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 盗撮などの性加害行為をやめられないのも依存症の一種とされる。世界保健機関(WHO)の分類では「性嗜好(しこう)障害」と呼ばれるが、国内に支援の場は多くない。

 県内で数少ない治療機関のさいがた医療センター(上越市)では最近、受診する人が増えている。のぞきや盗撮が最も多く、露出などの患者もいる。

 治療では診察やカウンセリングを行い、同じことをしないための計画「クライシスプラン」を作る。盗撮なら「駅には近づかない」といった具体的な行動を書き出す。

 ただ、再犯防止に最も大切なのは「孤立の防止」。患者の増加も受け、10月から新たにグループのプログラムを始める。患者同士が経験や思いを語り合い、回復を目指す。佐久間寛之副院長は「話ができる環境は非常に重要」とみる。

 患者は自尊感情が低く、虐待やいじめの被害などを経験した人が多いという。そんな生きづらさにも光を当てていく。

 佐久間副院長は「(性加害行為を)医療として診ることに院内で議論はあった」としつつ、患者を受け入れる理由をこう明かす。「刑事罰を科せられても止まらず、本人も家族も傷付いて病院に来る。何らかの治療や支援があるべきだ」

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 吉田さんは逮捕後、妻が探してくれた県外のクリニックを受診。夜行バスを使い、カプセルホテルに泊まりながら週の半分は治療プログラムに参加する生活を半年続けた。

 現在は別の仕事に就く。女性の多い所に身を置かないなど行動も改めた。妻に気持ちをはき出し、瞑想(めいそう)など内省の時間もつくる。支えてくれる妻には、申し訳なさと共に感謝する。

 被害弁償はしたが、罪の意識は今もある。クリニックでは性暴力被害者の女性と対話した。「被害者を忘れないでほしい」。その言葉を胸に刻む。

 「苦しみながら生きる被害者にとって、ここまで償えばいいという終わりはない」と吉田さん。自らの弱さを認め、盗撮しない一日を積み重ねる。それが自分にできることだと考えている。