夕日の中で語らう親子。当事者からは依存症によってうまく築けなかった親子関係が浮かぶ(写真は本文とは関係ありません)
夕日の中で語らう親子。当事者からは依存症によってうまく築けなかった親子関係が浮かぶ(写真は本文とは関係ありません)

【2021/10/01】

 「殺そう」とまで思った父親は薬物に依存していた。関わりたくないほど大嫌いだったのに、大人になると父親と同じようにドラッグを使っていた。

 「我慢を重ねて生きてきた。苦しさをやり過ごすために薬物に手を出した」。薬物依存症と向き合う新潟市の男性(35)にとって、家は常に安心できる場所ではなかった。

 部屋には焼酎の4リットル瓶が何本も並び、祖父は酒を飲んでは怒鳴り、頻繁にコップを投げつけて割った。父親からは理由も分からずたたかれ、蹴られた。弟は小さなネズミが死ぬほどの威力があるエアガンで撃たれたこともある。親を殺す妄想で、殴られる苦痛をやり過ごした。

 小学2年から頭痛薬を飲み始め、人混みで目が回るパニック障害も発症。母親は父親に抵抗せず、自分も家庭の問題は「言ってはいけない」と、周囲に助けを求めることはなかった。小学6年で両親が離婚して母親と離れると、給食で食いつなぐ生活になった。

 高校に入った頃に、父親から幻覚作用のあるキノコ(マジックマッシュルーム)を見せられたことがある。「学校で売ってこい」。吸引する道具を渡され、粉末を「吸ってもいいぞ」と言われた。自分が使うことはなかったが、「なぜ渡されたのか」という考えが頭を巡って離れなかった。

 父親は、幻覚キノコを渡してきた数カ月後に亡くなった。父親が昔、たばこの先に何かの粉をつけて吸っていた記憶もある。「自分も仲間にしたかったのか」

 危険ドラッグに手を出したのは24歳のとき。仕事も私生活もうまくいかず、夜も眠れない。処方薬は出される量に限りがある。危険ドラッグに行き着き、3度入院した。

 「困っても、誰も頼らなかった。薬で苦しみを考えないようにしていた」

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 依存症の家族がいる子どもが、同じ依存症になる世代間連鎖のケースは少なくない。

 法務省の調査で2017年に覚醒剤取締法違反を含む罪で全国の刑事施設に入所した受刑者のうち、家庭内で違法薬物の使用者がいたのは男性で10・6%、女性で20・6%。家庭内でアルコールの問題を抱えている人がいたのは男性で18・0%、女性で26・3%だった。

 父親がパチンコに興じるギャンブル依存症だった県内の20代女性は「生活が苦しいのは当たり前で、おもちゃや服を買ってもらえなくても、『欲しい』という意識もなかった。友達には家の事情を隠していた」と振り返る。今は自らもパチンコ依存に直面する。嫌なことがあったときの逃げ場にしてしまうという。

 上越市のさいがた医療センターの精神保健福祉士阿部義隆さん(38)は「親に甘えられないなど複雑な成育歴により傷つき、生きづらさを抱える人は多い」とみる。

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 依存症の家族がいる子どもの心の負担は大きい。新潟日報社の依存症のアンケートでも経験が寄せられた。

 県内の50代女性は、父親がアルコール依存症で、母親からは「父親に似てるから出来が悪い」などの暴言や暴力を受けて育った。ストレスから頭髪や体毛を抜いてしまう抜毛症になった。今も「抜毛とアルコールに逃げている」と明かす。

 依存症者の地域活動を支援する県立看護大(上越市)の徐淑子(そうすっちゃ)講師(56)=人間環境科学領域=は、依存症の家族がいる子どものケアの重要性を指摘する。ただ、本県を含め全国的にも子どもを対象にした活動は少ないという。

 徐講師は「同じ立場の子どもが集まって自由に遊び、本来の子どもらしさを出して、苦しさを素直に言えるような場所が必要」と訴えている。