米国の古い映画を見ていると違和感を抱くことがある。登場する日本人の描写が妙だ。中国人も韓国人も十把ひとからげにしているような感じ。「それは違うよ」と心中でつぶやく
▼欧米の白人にとってアジア人の顔は見分けにくいようだ。自分と同じ人種の顔は覚えやすいが、異なる人種は覚えにくい傾向がある。心理学の研究でも知られている。人種差別問題を解決する一助にと古くから探求されてきたテーマだ
▼この偏りは、目覚ましい進化を続ける人工知能(AI)の顔認証でも問題になってきた。AIはおびただしい顔データを基に個人を識別しているが、データの質も重要だ。人種の割合が白人に偏ると、黒人やアジア人の認証精度が低くなりやすい
▼AIはネット世界の膨大な情報を自ら集めて学習する。ネット上にあふれる悪意や差別を学習すると、AIの認識に反映される恐れがある。米国ではAIが誤って認識し、有色人種を誤認逮捕する問題も起きたという。先端技術を活用する際にも、偏りの排除は欠かせない
▼心理学の専門家によると、自分と異なる人種との接点を多くしたり、興味や関心を持ったりすることで偏りは解消されるという。相手を知りたいと思うことが大切なのだろう
▼自分とは違う世代の人の顔が、みな同じように見える-。これも似たような認識の偏りだ。人間の心というのは自分を中心に物事を捉えがちなのだろう。ただ、あまりに自己中心的な人は嫌われる。自戒しつつ周囲を見回してみる。