その弾道を今も鮮明に覚えている。1983年8月、甲子園球場での全国高校野球選手権大会準決勝。夏、春、夏の甲子園3連覇を狙う池田(徳島)の水野雄仁投手(元巨人)から左翼席に本塁打を放ったのは、PL学園(大阪)の小柄な1年生投手だった
▼この1年生は、「やまびこ打線」を擁して当時の高校球界を席巻していた池田を5安打完封で破り、決勝も勝って優勝する。巨人や大リーグでプレーした桑田真澄さんである
▼桑田さんは巨人時代に通算173勝を挙げた名投手だが、打撃と守備のセンスも抜群だった。練習方法にも独自の哲学を持つ。長時間練習が当たり前だったPL学園時代、名将の中村順司監督に練習時間の短縮を直言したのは語り草だ
▼プロ野球ファーム・リーグ(2軍)のオイシックス新潟アルビレックスBCは、桑田さんを球団運営などに助言するCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)に迎えた。桑田さんは練習だけでなく、栄養や休養を含めたスポーツ医科学を積極的に活用する方針を示している
▼2軍のリーグ戦がきょう開幕する。オイシックスの対戦相手が古巣の巨人というのも何かの因縁だろうか。期待はますます高まる。ただ、桑田さんは「ぼくが来たからすぐに強くなるような甘い世界ではない」とも話す
▼まずはプロの世界で戦える人材の育成と、応援してもらえる球団になるための文化をつくることに力を注ぐ。球界きっての理論派が指導するチームから、しばらく目が離せない。
