「石のまち」糸魚川でヒスイ文化は生まれた。さかのぼれば縄文時代前期にその痕跡を見つけることができるらしい。人を引きつけた鉱物の魅力は何か?
▼一つは「内蔵する神秘的な魔性」だと糸魚川市の郷土史家、土田孝雄さんは挙げる。さらに著書「翠(みどり)の古代史」の中で、ヒスイの緑色について論じている。緑は冬を除き自然界で最も普遍的な色彩の一つなのだという
▼冬の長い眠りから春を迎え、緑は平原を包む。それは「生命のよみがえり」である。やがて実を結び、食料となる恵みの色でもある。縄文の人は、安心を与えてくれる色彩として緑を受け止めたのではないか、との推論だ
▼芽吹く季節を喜ぶのは、現代も昔も同じなのだろう。土田さんの著書からは縄文の人々のおしゃれ心も浮かび上がってくる。胸元にヒスイの飾りを下げ、髪には朱色のくし、骨製のヘアピン、土で作った耳飾りも使った
▼もしかすると、そこに青色もあったのではないか。糸魚川で採取された青い石が、宝石として知られる「ラピスラズリ」であることが分かった。人類史に7千年以上前から登場する石で、産地はアフガニスタンなど限られた地域とされてきた。まさか国内にあるとは、驚きの発見だ
▼紙面に載ったその石は、海のような青を放つ。過去にも糸魚川で見つかったことがあるが、石拾いイベントのためにまかれた外国産だろうとみられてきたようだ。きっと糸魚川にはまだまだ足元に希少な石がある。「石のまち」の名は盤石だろう。
