ふらりと立ち寄った新潟市中央区の會津八一記念館で、八一の人脈図を見ていたら、最近、書店でよく見る人物の写真が目に留まった。NHKの連続テレビ小説「ばけばけ」で注目される小泉八雲ことラフカディオ・ハーンである

▼2人の出会いは八雲の最晩年だ。1904(明治37)年3月に早稲田大学で教壇に立った八雲の、最後の弟子が八一だった。八雲はその年の9月に急逝したから、八一が教えを受けたのは数カ月に過ぎない

▼それでも、そこには濃密な時間があったのだろう。後に八一は、八雲から学んだ英文学史や民俗学的観察法を、東洋美術史学の研究に結実させている

▼2人の関係は、続きがあるから面白い。八雲の死から6年後、現上越市の有恒学舎で英語教師をしていた八一は、恩師のすすめで早稲田中学に赴任する。そこで学んでいたのは八雲の子どもたち。八一は彼らの才能を見いだし、時には父親代わりとなり、小泉家の人々と終生、親密な関係を築いたという

▼言葉も通じない異国に来た八雲と、理解し合おうと心を寄せ続けた人々の交流が、日本の文化を育んだ。小川未明や相馬御風といった本県ゆかりの文人も、八雲に学び、刺激を受けたというから感慨深い

▼人と人、国と国が理解し合うには歩み寄りがいる。意に添わないからと力に頼れば、憎しみしか生まれない。〈日に日に世界が悪くなる 気のせいかそうじゃない〉と歌うばけばけの主題歌が、今の世界情勢に符合して聞こえるのは残念なことだ。