朝ドラ主題歌で注目度を上げた夫婦デュオのハンバートハンバートには「虎」という曲がある。〈人の胸に届くような〉歌を作りたいのに〈光ることば見つからない〉〈メロディひとつできやしない〉と思うに任せぬ苦悩を歌う

▼もがいた挙げ句〈酒だ酒だ〉と昼間から飲み〈虎にもなれずに溺れる〉と創作活動に伴う鬱屈(うっくつ)を吐き出す。日々コラムを書く身にも通じる。昼間から会社で酒は飲めないけれど

▼言葉を紡ぐ作業は、正直になろうとするほど難しくもなる。大仰ではなく、舌足らずでもなく、的確に真意を表現できたらいい。己の非才を棚に上げるつもりはないが、このところ政治を巡るうさんくさい言葉がどうにも気になる

▼政府は「国民会議」で社会保障について「国民的な議論」をするという。参加者は限定的だ。ここで言う国民って誰なのか。「過度な」緊縮財政を見直し「責任ある」積極財政を推進するという方針も、何だか浮いて聞こえる

▼1100兆円を超える国債発行残高は過度な緊縮で生まれたのか。財源の裏付けなく防衛費増額や消費減税を掲げるのは、責任ある政治なのか。明快なスローガンは時に気を付けねばならない

▼首相は「謙虚」な国会運営に徹し「丁寧」に対応するとした一方で、予算の年度内成立を譲る気配はなく、早々に予算審議を収束する日程を示してきた。聞こえのいい言葉の使い捨てなら捨て置けない。知事の「県民に信を問う」とした言葉の顚末(てんまつ)を知る新潟県民としては、なおのこと。