国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会での韓国との対立を乗り切り、ようやく世界遺産登録を果たした「明治日本の産業革命遺産」。2015年、日本政府が国際社会の場で「厳しい環境で働かされた朝鮮半島出身者がいた」と語るより前から、戦時中の記憶を伝えている地域がある。同じ「明治日本」の構成資産の一つ、三池炭鉱を持つ福岡県大牟田市だ。

 市内の小高い丘にある甘木公園。眼下に炭鉱跡を見渡せる一角に、徴用犠牲者を悼む慰霊碑が建つ。

徴用犠牲者を悼む慰霊碑の前に立つ藤木雄二。歴史を伝える遺構の存在によって「地域の記憶に定着している」と語る=福岡県大牟田市

 使われている石は韓国産。1995年に完成した碑の建立文にはこう刻まれている。「第二次世界大戦時下、この地に徴用され、労苦の果てに亡くなられた方々の御霊(みたま)に対し、深...

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