
酒粕(さけかす)のチーズケーキ、焦がし醤油(しょうゆ)のプリン、白味噌(みそ)のパウンドケーキ。名前を聞くだけで、うっとりする。どんな味がするんだろう。脳内で想像しては、実物を食べてみたいと思っていた。
発酵スイーツが人気だ。味噌、醤油、酒粕、甘酒、麴(こうじ)などの発酵調味料を使った菓子のことで、「体にいい」「きれいになる」と甘い文句が踊る。クリームを酒粕や甘酒に置き換えるから、ヘルシーかつカロリーカットになるが、最大の魅力は「おいしい」に尽きるだろう。これには、ちゃんと根拠があった。
「発酵食品に含まれる微生物がタンパク質を分解する際、うまみ成分を作り出します。これが、おいしい理由です」。新潟食料農業大学(新潟県胎内市)の教授で、醸造と食品微生物学を専門とする金桶(かねおけ)光起さん(61)は説明する。
もう少し詳しく言えば、単体のアミノ酸少量では味を感じられなくても、乳酸やコハク酸、グルタミン酸といった成分が複合的に組み合わさることで、うまみがアップするという。となれば、発酵食品同士を組み合わせれば、もっとおいしくなるってこと? 「混ぜたり、食べ合わせたりすることで、単体では味わえないおいしさになることはあります」
では、スイーツに合わせる飲み物は何がいいだろう。コーヒーも紅茶も、実は発酵食品。とはいえ「だから合う」と言い切るのは早計だ。甘みと苦みのバランスや、慣れ親しんだ組み合わせという要素も大きいからだ。
ただ、緑茶よりも、半発酵させたウーロン茶が合うという説には、金桶さんもうなずいた。「苦みや渋みが突出していないけれども独特の風味がある。相乗効果がありそうですね」。と、ここでチャレンジ。「日本酒はどうでしょう」。「いいと思います」。県醸造試験場で働いていた時から、酒と食の相性の良さを研究してきた金桶さんは、即答した。
気になる新潟県の発酵スイーツ、その作り手に話を聞いた今回。魅力をひもとき、合わせたい日本酒も添えた。...