中国の民主化運動を武力で弾圧した天安門事件から34年となった先日、香港で追悼行動をしたとされる1人が逮捕され、20人余が連行された。花束やロウソクを持っていただけの人も含まれるという
▼ロシアでは同じ日、反政権派指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める行動を起こした百人以上が、警察官に拘束された。同氏の誕生日に合わせ「ナワリヌイに自由を」と書いた紙を掲げ、公園に立つなどしていた人々だ
▼ロシアではウクライナへの侵攻以来、抗議行動などで約2万人が拘束された。中国でゼロコロナ政策に抗議した「白紙運動」に関わった若者が、相次いで警察に連行されリンチを受けたという証言もある
▼21世紀の世の中でも、自由にものが言えない人々がどれほどいることか。中国やロシアが例外とは言い切れない。スウェーデンの調査機関は、世界で権威主義に向かう国が増えており、民主主義国は半数以下に減ったと報告する
▼各国の民主主義指数を調査する英国の国際経済誌によると、日本は「欠陥のある民主主義」に分類される。選挙における投票率の低さなどが評価を下げたとされるが、絶えず求め続けなければ健全な民主主義は手にできないのだろう
▼マイナンバー制度も、個人情報がつまったスマートフォンも、防犯のための監視カメラも、当然ながら「悪意」のない活用を前提にしている。ただ、ひとたび国家が優先される事態になればどうなるか。国民生活に資するという建前と実態が乖離(かいり)しないかを憂う。