世界遺産は登録時の形を保ち続けなければならない。三つの世界遺産を抱える奈良県は、その保全に常に追われる状態だ。
標高千メートルを超える山並みと荘厳な寺院。2004年に世界文化遺産に登録された、奈良、和歌山、三重の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」は、霊場を結ぶ信仰の道だ。奈良県側の吉野山は修行の場であるとともに、春は花見客でにぎわう観光の場でもある。

山中にあるため豪雨などの影響を受けやすく、時に路肩の崩落や土砂崩れなどが発生する。6月2日の大雨の後も、市町村の職員らが見回りに当たった。雨水の流れを誘導する対策はしているが、基本的には被害が発生してからの処置が中心だ。奈良県文化財保存課...
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