
「壊滅状態ですよ」。仕事場に程近い市街地を歩く上野芳和さん=1月28日、輪島市河井町1
「何もかも燃えちゃって…」。がれきで辺り一面が埋め尽くされた石川県輪島市河井町。新潟県新発田市出身の輪島塗職人、上野芳和(よしかず)さん(52)は、仕事場に近い河原田川を望む焼け跡の一角で足を止めた。最大震度7を観測した能登半島地震が起きた元日、消し止められなかった火は輪島朝市をのみ込んだ。地震の被害と大火で、伝統工芸の輪島塗を支える多くの職人たちの工房や住まいが失われた。上野さんの仕事場は火災を免れたものの、甚大な被害を受けた。「これから一体どうなるのか」。地震発生から1カ月たち、上野さんは先行きに不安を募らせている。
(本社取材班・笹川比呂子、写真は金子悟)
上野さんは、天然木と輪島塗の組...
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