将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯(新潟日報社など主催、協賛社・大塚製薬)5番勝負の第3局が3月3日、新潟市中央区の新潟グランドホテルで指される。藤井聡太棋王(八冠)に、初のタイトルを狙う伊藤匠七段が挑む。2人による注目の「同学年対決」や、新鋭たちを歴戦のプロはどう見ているのか。立会人で、棋界最高峰の「竜王戦」を3連覇した実績がある藤井猛九段に対局の見どころや、令和の棋士像について尋ねた。(4回続きの1)
藤井聡太棋王は2023年10月に王座を獲得し、史上初の全八冠を保持している。対して伊藤匠七段は初めてのタイトルを狙う。藤井猛九段は「八冠を極めた藤井棋王は新しい目標を設定しないといけない大変さがある。対して伊藤七段はタイトルを目指すだけ、わかりやすい」と構図を語る。
タイトル20期の藤井棋王は、登場したタイトル戦番勝負で敗退なしと圧倒的強さを誇る。藤井猛九段は「変な話、一つか二つタイトルを失った方がモチベーションが上がる。強者の悩みで、そこは理解が難しい。藤井棋王は自分の将棋をどう高めていくかに集中している気がする」とみる。相手が誰でもぶれないという考えだ。
藤井棋王からタイトルを奪うのは至難の業だ。今シーズン対局数と勝ち数のランキングで1位の伊藤七段でさえも、2023年の竜王戦7番勝負では4連敗している。藤井九段は「伊藤七段は強いが、力比べでは分が悪い。足りない部分は武器を使わないといけない。それは研究です」と強調する。藤井棋王の想定を上回る伊藤七段の研究があるか注目だ。
藤井九段も1998~2000年、羽生善治九段ら強敵を下し、竜王戦を3連覇した。その原動力になったのが当時、四間飛車に革命を起こした「藤井システム」だった。藤井九段は「藤井システムという武器で羽生さんと戦い、竜王をとった。今回も武器を生かしていく戦いになる」とした。