将棋の第49期棋王戦コナミグループ杯(新潟日報社など主催、協賛社・大塚製薬)5番勝負の第3局が3月3日、新潟市中央区の新潟グランドホテルで指される。藤井聡太棋王(八冠)に、初のタイトルを狙う伊藤匠七段が挑む。2人による注目の「同学年対決」や、新鋭たちを歴戦のプロはどう見ているのか。立会人で、棋界最高峰の「竜王戦」を3連覇した実績がある藤井猛九段に対局の見どころや、令和の棋士像について尋ねた。(4回つづきの4)
- <1>「藤井システム」のような武器
- <2>「羽生世代」が見る同学年対決
- <3>強敵と勝ち星と
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人工知能(AI)を使った研究から距離を置く藤井猛九段。AI時代におけるプロ棋士の個性をどのように考えているのだろうか。
「考えさせられてますね」と藤井九段は切り出した。「AIは非常に便利な道具なんで、それを普通に受け入れて、活用している」と将棋界の現状を説明した上で、「プロ棋士の個性が失われつつあり、難しい問題に直面してるんです」と語った。

第49期棋王戦第3局の前夜祭でマイクを握る藤井猛九段
例えば今、AIの評価がやや劣る「振り飛車」を指すトップ棋士は少ない。AIを使った事前研究もどんどん深まり、タイトル戦でも想定の局面まで、ほとんど時間を使わないことがある。
「フィギュアスケートのジャンプと同じ。4回転とか飛ぶじゃないですか。でも飛ばなくてもいい。演技がよければよい。でも飛んだ方が得点が高い。ちょっと金メダルを目指す『オリンピック競技化』している感じ。将棋の面白さをみんな楽しもうよっていうのがあるといい」と話す。
一方で、「AIとは距離を置きたいんですよ。できれば個性を出したい。しかし、伸び盛りの若手は勝たなくてはいけない。無視できない」と棋士の置かれた難しい立ち位置を語った。
=おわり=