真相は解明されず、トップにはおとがめがない。納得感のない曖昧な決着と言わざるを得ない。

 裏金事件の究明を棚上げしたままの処分で幕引きを図ることは許されない。これでは国民の政治不信を払拭できない。

 自民党は、党紀委員会を開き、派閥の政治資金パーティー裏金事件で関係議員の処分を決めた。

 党則に基づき、安倍派の衆院側、参院側でトップだった塩谷立、世耕弘成両氏を、除名の次に重い離党勧告とし、下村博文、西村康稔、高木毅の3氏には次に重い党員資格停止を科した。

 派閥幹部を務めた責任の重さや、不記載額を考慮した。離党勧告や党員資格停止によって選挙活動や国会活動で制約を受ける。厳しい処分とはいえる。

 しかし過去には程なく復党し、要職に就いた例は多い。実効性があるかは疑わしい。

 安倍派の問題では、2022年に中止したはずの違法な資金還流が復活した経緯が焦点となった。

 国会は衆参両院で政治倫理審査会を開いたが、安倍派幹部が「知らぬ存ぜぬ」を繰り返して真相は明らかにならなかった。

 岸田文雄首相はその後、自ら安倍派幹部に聴取したものの、決定的な新事実は出ていない。

 実態が解明されないのに処分を決める対応は理解に苦しむ。

 処分は当初、80人規模で調整したが、安倍派と二階派の計39人にとどまり、不記載額が500万円未満は党紀委に諮らなかった。

 だが、金額による線引きは悪質性を判断できず、不合理だ。

 処分の縮小は党内の反発が拡大するのを避けるためとみられ、首相の政治的思惑が透ける。

 最大の問題は、岸田首相と二階派領袖(りょうしゅう)の二階俊博元幹事長が処分対象にならなかったことだ。責任の重さや額の大きさを考慮した処分だとしながら、矛盾している。

 二階派では元会計責任者が在宅起訴され、二階氏の秘書は2月に有罪が確定した。不記載額は3526万円に上り、立件された議員を除けば最多だ。

 二階氏は先月、唐突に次期衆院選に立候補しないと表明したが、それと処分は別の話だ。このタイミングでの不出馬表明は責任回避の逃げにしか映らない。

 二階氏は、幹事長在任中に約50億円もの巨額の政策活動費を受け取ったことも問題視される。しかし何の説明もないままだ。

 処分されるべき人が免罪されるのでは公平性を欠いている。

 岸田派では、元会計責任者が立件されているが、首相は自らを処分しなかった。

 これだけ多数の議員が一斉に処分を受け、真相解明もできていないのに、トップが何の責任も取らないというのは、一般の企業ではあり得ないだろう。このままで国民の理解を得るのは難しい。