宇宙での活動を広げる可能性を大いに高めたと言えよう。技術開発をさらに進め、人類の未来を切り開いてもらいたい。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙飛行士の食料や実験機器などを運ぶ日本の新型無人補給機「HTV-X」1号機を、H3ロケット7号機で打ち上げた。
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の油井亀美也飛行士が、秒速約8キロで近づくHTV-Xをロボットアームで捕捉することに成功し、結合した。
HTV-Xは、2009~20年に9回の輸送を成功させた「こうのとり」の後継機となる。
大きな特徴は、こうのとりより性能を高めたことだ。
運べる荷物の量を、1・5倍の約6トンに増やしたほか、積み荷への給電機能を加え、冷凍庫で低温保存が必要な実験試料も運べるようになった。
JAXAの担当者は「米国やロシアの補給機と比べても輸送能力は高い」としている。ISSで行われる実験に、大きく貢献することが期待される。
ISS係留後は、すぐに大気圏に突入し焼却処分されたこうのとりとは違い、約3カ月間、宇宙を飛行し超小型衛星の放出や、新技術の試験なども行うという。
輸送と技術実証の「二刀流」の働きと言え、どのような成果をもたらすか楽しみだ。
2号機以降はさらに機能を高めていかねばならない。米国が主導する国際月探査「アルテミス計画」が待ち受ける。
この計画で日本は月周回基地への補給を担当する。基地での飛行士滞在は年30日ほどで、不在時に荷降ろしする機能が欠かせない。このため2号機以降はISSとの自動結合を試す計画だ。
また、ISSの千倍も遠い月へ行くには、より多くの発電機能と軽量化が求められる。
多くの難しい課題をクリアし、日本の技術力の高さを世界にアピールしてほしい。
H3ロケット7号機は、補助ロケットが2本多い最強型で、大型衛星や多数の小型衛星をまとめて打ち上げたいとの需要に応えられるタイプだ。
JAXAは、衛星のサイズや軌道に柔軟に対応できる3タイプを準備しているという。
過去のH3ロケット打ち上げ失敗などで、日本は宇宙ビジネスで出遅れたが、今回の打ち上げを機に存在感を示してもらいたい。
