県民が原発の再稼働に懸念を示したといえる。この調査結果とどう向き合うか。花角英世知事の誠実な対応が求められる。
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非に関し、県が9月から実施してきた県民意識調査の結果が出そろった。公聴会、市町村長との懇談会に続き、知事が地元同意に進むかどうかの最後の判断材料が示されたことになる。
調査は、無作為に抽出した県内全30市町村の6千人に、原発から半径30キロ圏内の9市町村の6千人を加えた計1万2千人に調査票を送付して行われた。
「再稼働の条件は現状で整っているか」について、全県の調査では「そうは思わない」「どちらかといえばそうは思わない」との否定的回答が計60%に上った。
原発30キロ圏の9市町村でも、同様の否定的な回答が8市町で53~64%と半数を上回った。刈羽村では48%だった。
県は10月から、30キロ圏の住民を対象にインターネット調査も追加実施し、8344人に回答を求めた。ここでも否定的な回答が61%に上った。
再稼働を推し進める国や東電には厳しい結果である。
東電はトラブル隠しをはじめ信頼を損ねる不祥事や失態を重ねてきた。事故を起こした福島第1原発の廃炉もおぼつかないままだ。
「東電が運転することは心配だ」との回答は「どちらかといえば心配」を含め全県で69%、30キロ圏で62%に達した。不信感を拭えていない現実が浮かび上がった。
「柏崎刈羽原発の安全性が確保されていると思うか」の設問では「わからない」との回答が一定数あった。県民の迷いがうかがえる。原発に関する十分な情報が提供できていないのではないか。
花角知事は、県民意識調査などを通じて多様な意見を把握したいと述べてきた。だが、調査の公正さには疑問がある。
再稼働すべきかを尋ねる設問で「どのような対策を行ったとしても」との前提を付けたのは、再稼働容認へ誘導したものと勘繰られはしないか。
インターネットによる調査は、9月実施の調査が「人口比になっていない」と県議会から批判され追加した。しかし都合のよい結果を求めて調査を追加したのではないか、との疑念を招きかねない。
このネット調査の有効回答は18・8%にとどまった。多様な民意を把握できたといえるのか、県の認識を問いたい。
東電は、再稼働を目指す6号機の技術的準備は整ったとしている。再稼働問題の焦点である知事の判断が示される時期は近い。
知事は柏崎刈羽の視察に加え、福島第1原発にも赴く意向を示した。判断に向け、福島の地と向き合うのは大切である。教訓をしっかり見つめてほしい。
