各地で発火事案が相次いでいる。大きな被害を防ぐためにも、適切な使用を心掛けたい。

 充電して繰り返し使えるリチウムイオン電池が発火するなどした事故が2020~24年度で計2350件に上った。

 消費者庁と関係機関で運営する事故情報データバンクの登録内容からの推計で、スマートフォンが約350件、電動アシスト自転車が約300件、モバイルバッテリーが約300件と多かった。

 身近に使っている製品に、発火や発煙の危険があることを知っておきたい。変形したり、熱くなったりといった異変を感じたらすぐに使用を中止することが重要だ。

 リチウムイオン電池を原因とする発火事案は公共交通機関でも相次いでいる。

 7月にはJR山手線の車両内で乗客の荷物のモバイルバッテリーから火が出て、男女5人が軽いけがをした。山手線などで運転見合わせが続き、約9万8千人に影響する事態となった。

 旅客機では機内に持ち込む際、異変に気づくため、手元に置くよう呼びかけている。

 電車などを利用する際にも、目の届く場所に置きたい。

 発火の原因として、製品自体の欠陥も指摘されている。中国大手メーカーの日本法人アンカー・ジャパンは計4製品約52万台を自主回収すると発表した。

 これ以外にも、リコール対象になっている製品は少なくない。

 使用中の製品が対象になっていないかを再確認してほしい。メーカーのホームページのほか、消費者庁リコール情報サイトなどで調べることができる。

 リチウムイオン電池は構造上、熱や衝撃に弱い。専門家は、高温になる場所に放置したり、落として衝撃を与えたりしないよう求めている。加えて、過充電による発火の可能性もあるため、就寝中の充電などは避けたい。

 また、全国的にごみ処理施設やごみ収集車で、リチウムイオン電池が原因とみられる火災事案が頻繁に発生している。

 対策として、政府はモバイルバッテリーなど4製品を小型家電リサイクル法の回収対象に加える方向で調整に入った。家庭ごみと分けて回収することで事故を防ぐ狙いがある。

 新制度が導入されるまでは、製品の回収方法は自治体ごとに異なるため、居住地の対応を確認してから処分する必要がある。

 リチウムイオン電池は、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんらが開発した画期的なものだ。使われている製品はノートパソコンやコードレス掃除機、携帯用扇風機など、私たちの生活からもはや切り離せなくなっている。

 適切な使用法を守れば、火災などのリスクを避けられることを心に留めておきたい。