所信表明演説をなぞるような慎重な姿勢が目立った。少数与党として政策を実現させるには、活発な論戦が不可欠だ。
高市早苗首相の所信表明演説に対する代表質問が4日、衆院本会議で始まった。参院でも5日から行われる。
高市氏の首相就任後、初の国会論戦だ。自民党と日本維新の会の連立政権としても、初めての論戦の場となる。
4日は与野党4氏の質問に答え、高市氏は衆院議員の定数削減を巡り「できるだけ幅広い賛同を得ることが重要だ。各党とも真摯(しんし)な議論を重ねたい」と述べるなど、野党との対話を重視する考えを度々口にした。
与党の衆院会派の議席数は自民196、維新34の計230で過半数の233には3議席届かない。
参院でも少数与党の高市政権にとって、予算案や法案を成立させるには野党の協力が欠かせない。
定数削減に関しては、熟議による合意形成が必要だろう。
しかし、自民党が7月の参院選で大敗して以降、政治の停滞が長くなっている。
国民が求める物価高対策については、スピード感を持って前に進めてもらいたい。
ただ、政策協議は難航も予想される。立憲民主党の野田佳彦代表は、自民党派閥裏金事件に関し「衆院選、参院選で示された民意は政治への信頼回復だ」と指摘し、対決姿勢を鮮明にした。
さらに、企業・団体献金についても、自民と維新が連立政権合意書で、結論を得る時期を「高市総裁の任期中」としていることを先送りと批判し、献金の受取先を限定する関連法を今国会で成立させるよう訴えた。
高市氏は「さらなる規制の強化は企業、団体の政治活動の自由に関わる」などと答えた。
野党に政策協議を呼びかけながら、協力の足かせとなる「政治とカネ」の問題では踏み込んだ答弁を避けた形だ。
政治とカネの問題を放置するようでは、野党との今後の協議の障壁となる。
参院選では企業・団体献金の禁止を訴えていた維新が変節したと有権者の目に映れば、さらなる政治不信を招くことも考えられる。
高市政権は、野党の追及に正面から答えることが求められる。
高市氏は、持論の保守的な政策については踏み込んで答弁する場面も見られた。
憲法改正に関しては「時代の要請に応えられる憲法制定は喫緊の課題だ」「少しでも早く改憲の賛否を問う国民投票が行われる環境をつくれるよう、粘り強く全力で取り組む」とし、9条改正への強い意欲を示した。
議論の分かれるテーマである。こうした課題こそ、党派を超えた熟議を重視してもらいたい。
