毎年のように繰り返される感染が、養鶏事業者に大きな負担を与えている。殺処分など防疫措置に当たる県職員らの消耗も心配だ。

 影響を最小限に抑えなければならない。国や自治体には、さらに進んだ対策を求めたい。

 胎内市の養鶏場で9日、高病原性鳥インフルエンザが確認された。県内の養鶏場での確認は今季2例目で、県職員や委託を受けた民間事業者が採卵鶏約28万羽の殺処分を始めた。

 4日に1例目が確認された胎内市の別の養鶏場でも、県内では過去3番目の規模となる約63万羽の殺処分が進んでいる。

 二つの養鶏場の周辺では、既に飼育する鶏や卵などの移動制限といった対策が取られた。県によると、現時点で県内のほかの養鶏場で異常は確認されていない。

 養鶏事業者には、生産現場の衛生管理を徹底し、これ以上の感染を防いでもらいたい。感染が起きてしまった場合に、異常を早期発見、通報することも重要だ。

 県内養鶏場では近年、鳥インフルの感染がほぼ毎年起きている。

 特に、2022年秋から23年春のシーズンは5件と過去最多で、殺処分も約257万羽に上った。

 事業者のダメージは大きい。約130万羽を殺処分した村上市の養鶏場は操業再開を断念した。

 鶏卵不足から価格が上がるなど、大規模な殺処分の影響は消費者にも及ぶことになる。

 こうした事態を避けるため、国や県は、養鶏場内を複数の区域に分けて鶏を飼育する「分割管理」を勧める。仮に一部の区域で感染が確認されても、他の区域で発生しなければ感染区域以外の鶏は殺処分を免れるからだ。

 ただ、今年2月時点で、県内97養鶏場のうち導入したのは6養鶏場にとどまる。今回、感染が確認された2カ所の養鶏場も導入していなかった。

 多額の設備投資や作業人員の確保が難しいことが、導入の壁となっている。国は、補助の拡大など現場の実態に即した支援を検討する必要があるだろう。

 防疫措置を主に担う自治体からは、対応は限界だとの声も上がる。

 共同通信社の調べでは、24年度までの5年間に防疫措置をした37道県のうち、本県など20県で職員が心身の不調を訴えた。22年シーズンであれば、本県で20件の相談が寄せられた。

 専門家からは「相談者は氷山の一角」という指摘もあり、問題の深刻さがうかがわれる。

 全国知事会は、国が感染発生時に専門職員を投入するほか、機動的に民間人員を投入できる態勢を整備するなど、国が関与を強めるように求めている。

 最前線である自治体が疲弊しては、感染拡大防止に支障が出かねない。国と自治体の効果的な連携を早急に築かねばならない。