規制の視点が強すぎるのではないか。懲罰的な対応は、外国人との共生を損ねる可能性がある。慎重な議論を求めたい。
高市早苗首相は、外国人政策に関する政府の関係閣僚会議の初会合を開いた。
外国人による土地取得ルールの見直しを検討するほか、税・社会保険料の未納防止策も強化する見通しだ。来年1月をめどに「総合的対応策」をまとめる。
高市氏は対応の背景として、一部の外国人による違法行為やルールの逸脱があり、国民が不安や不公平感を感じていると指摘した。
「排外主義とは一線を画しつつ、こうした行為には政府として毅然(きぜん)と対応する」とした。
違反があれば、国籍にかかわらず毅然と対応するのは当然である。言葉の通り、排外主義に陥らぬようにすることが大切だ。
全国の在留外国人は、2024年末時点で376万人に上る。前年に比べ35万人増という過去最大の伸びとなった。
住民に占める外国人の割合は全国平均で3・0%になっているのが現実だ。本県は1・1%で、湯沢町は8・3%と高い。
各地で人手不足となる中、地場産業の担い手などとして定着しているとみられる。
技能実習生らが、地域の貴重な支え手となっていることを認識しなければならない。
気になるのは、高市政権の外国人政策は管理、規制が強い点だ。
例えば厚生労働省は、外国人の国民健康保険の保険料未納を防ぐため、出入国在留管理庁と外国人の納付状況を共有する対策を27年6月から実施する。原則として滞納者の在留資格の変更や更新を認めない仕組みを導入する。
医療費の不払い情報についても医療機関から集め、中長期の在留資格の審査に反映させるという。
在留資格と結びつける懲罰的手法に頼る前に、社会保険制度を理解してもらう努力も必要だろう。
土地取引に関しては、リゾートエリアを中心に外国資本による開発が活発な北海道の一部議会で国に歯止めを求める意見書を採択する動きがある。
こうした懸念に国として対応することは必要だが、過度な規制にならぬよう、時間をかけた議論が欠かせない。
全国知事会は7月、「排他主義、排外主義を否定し、多文化共生社会を目指す」との宣言をした。直前の参院選で、外国人への規制強化を掲げた政党が躍進したことに危機感を募らせたためだ。
同時に、自治体任せになっている外国人の日本語教育や生活支援が全国一律のサービスになるよう、国の責任で財源を確保すべきだとの提言をまとめた。
知事会の主張はもっともだ。規制ばかりでなく、交流、共生を支える対応策を政府は練るべきだ。
