組みひもを作る際、ひもを折り返すような作業を繰り返して組み上げていく。漢字学者の白川静さんの「常用字解」によると、その様子を表した文字だという。「ふたたび」「かさねて」を意味する「再」である
▼災いに再び直面した。つらい記憶が再びよみがえった。そんな思いを抱いた方も多いのでは。深夜を襲った大きな揺れに、巨大地震の再来かと身構えた。2011年の東日本大震災から11年を迎えたばかりでもあった
▼震源は福島県沖で、最大震度は6強。すぐに津波注意報が発令された。11年前に過酷事故を起こした東京電力福島第1原発では、使用済み核燃料プールの冷却が一時停止した。津波と原発災害の記憶は今でも生々しい
▼東北新幹線の脱線は、04年の中越地震を想起させた。営業運転中の新幹線が地震で脱線したのはその時以来だ。立ち往生した上越新幹線の車体が、余震にぐらりぐらりと揺さぶられた姿は忘れられない
▼東北のまちには、倒壊した建物もあった。その様子をテレビの画面越しに目にした際も、中越地震や07年の中越沖地震の被災地が脳裏に浮かんだ。川口町(現長岡市)や柏崎市で、住宅が押しつぶされたように倒れていた。揺れの力の大きさに身震いがしたものだ
▼今回の地震は、過去の災害を再現したかのようにも見えた。ひもを組む作業を延々と繰り返していくように、今後もこうした災害に見舞われるかもしれない。一方で未知の災禍が待ち受けている恐れだってある。備えを怠れない。