「年賀状じまい悩ましい」と見出しがついた投稿が先月、本紙生活面の「ちょっと聞いてよ」に掲載された。相手から年賀状をやめると言われればやめざるを得ない、としながらも、年賀状でつながる懐かしい人たちとの縁が切れるのは悲しく、悩んでしまうという

▼わが身を振り返れば、年賀状の時季になると毎年、焦燥感とともに「面倒くさい!やめたい」と強く思う。それでも同世代の友人たちから「SNSがあるから、もう出さない」と宣言されると複雑な心境になる。投稿者に深く共感する

▼「年賀状のおはなし」(日本郵便株式会社監修)に載っていた、1949年に始まったお年玉くじつき年賀状のエピソードが印象的だった

▼戦争で音信不通となった肉親らを捜す「尋ね人」が連日ラジオで流れていた時代だ。年賀状で無事を確かめ合い、かつ、お年玉がついていれば、はがきを送った相手が懐かしさを抱き心が和むのでは、と発案されたという

▼そして現代。年賀状の発行枚数は2004年用は44億5千万枚だったのが、26年用は約6分の1の7億5千万枚。言わずもがな、SNSの普及や郵便料金の値上げなどが影響している

▼小学生の頃は、正月休みが明ければ学校で毎日会うのに「もち食べ過ぎるなよ」などと書かれた年賀状が友人から届くと、頰が緩んだ。きっと、年賀状のつながりはSNSほど近すぎず、単なる知人より温かい。相手が良しとしてくれるうちは、年に一度の心和む「無事確認」を続けていきたい。

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