師走の風物詩にもはやり廃りがある。街を彩るクリスマスのイルミネーションはすっかり定着した。一方で大掃除は一度にやらないで窓、水回りなどと分けてする人もいるという
▼年の瀬におなじみの忠臣蔵はどうだろうか。「忠臣蔵を含む時代劇は、一通り知っている層と全く知らない層に二極化している」。新潟大学人文学部の中本真人准教授(芸能論)は近年の傾向を指摘する
▼忠臣蔵は史実の赤穂事件を題材にしている。元禄15(1702)年12月14日、大石内蔵助ら赤穂四十七士が吉良上野介邸に討ち入り、主君の浅野内匠頭の無念を晴らす。人形浄瑠璃や歌舞伎でも演じられた
▼中でも仮名手本忠臣蔵は常に大当たりの人気を博す。不入りを打破することから万病に効く薬になぞらえ、芝居の独参湯(どくじんとう)ともいわれた。映画やテレビ時代劇の定番でもあった。銀幕や舞台に凝縮された人間ドラマが多くの人を引きつけた
▼若者のテレビ離れが進み、時代劇の放送も減っている。先月に全国各地で開かれた忠臣蔵検定で、四十七士の一人、堀部安兵衛ゆかりの新発田会場の受検者はゼロだった。「地元として寂しい」。関係者は肩を落とす
▼新発田市の二階堂馨市長も会見で「忠臣蔵が世間から遠ざかっている実感はある」と話す。市は先ごろ、浅野や四十七士らの墓がある東京・泉岳寺に墓参記念カードを置き「安兵衛の街」のアピールを始めた。いま一度の盛り上がりを。官と民がスクラムを組んで、エイエイオーと気勢を上げたい。
