言葉の中には、本来持つ意味を越えて特別なイメージをまとうものがある。記憶や思い出などとひも付くものは人によって異なるが、同じ時代の空気を吸った人であれば共感しやすい
▼「アポロ11号」はどうか。1969年に人類初の月面着陸を成功させた宇宙船だが、文明の進歩を象徴する響きがあり、冒険心も連想させる。晩秋から初冬にかけての晴天を表す「小春日和」には、なんだか平和で幸せな雰囲気が漂う
▼フィギュアスケート競技の「トリプルアクセル」もそうした一つではないか。3回転半ジャンプを意味する用語でしかないのに、どこか気高さや感動と結びついている。高難度の技に挑んだ女子選手の物語が投影されているからだろうか
▼成功させた選手は何人かいるが、女子として世界で初めて跳んだ伊藤みどりさんと、この大技で一時代を築いた浅田真央さんは心に残る。失敗も重ねながら大舞台の緊張にひるまず、逃げずに跳んで決めきった演技は、多くの人の記憶に刻まれているはず
▼その系譜を継ぐべき選手の一人になった。トリプルアクセルを最大の強みとする新潟市出身の17歳中井亜美選手が昨夜、フィギュアスケート全日本選手権を終え、ミラノ・コルティナ五輪への出場を確実にした
▼フリー演技ではその得意技が決まらずハラハラさせたが、憧れの舞台では再び、会心のガッツポーズを見せてほしい。県勢ではスノーボードの平野歩夢選手も4度目の五輪出場を確実にしている。2月の開幕が楽しみだ。
