ウクライナの平和を取り戻す道のりは一歩前進したものの、まだ多くの障壁が残る。戦火が一日も早くやむよう、国際社会は結束しウクライナへの支援を続け、連帯の輪を広げていかねばならない。
ウクライナ提唱の和平案「平和の公式」を協議する「世界平和サミット」がスイスで開かれ、100の国、国際機関が参加した。
領土の一体性に対する脅迫や武力行使をしないことのほか、10項目の和平案のうち、ロシアが占拠する原発の安全確保や食料安全保障、強制連行された子どもや市民の帰還の3項目について重要性を強調する共同声明を採択した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「結束した世界は、いかなる侵略者よりも強い」と述べ、サミットの成功をアピールした。
とはいえ、共同声明を支持したのは78カ国にとどまり、全参加国からは得られなかった。インドや南アフリカ、ブラジルなど新興国は支持を見送った。
ウクライナ主導のサミットに対し、ロシアは欠席するよう駐ロ大使を通じ各国に圧力をかけた。多くの新興国の首脳が出席せず、首脳級の参加は57カ国だった。
ロシアに影響力を持つ中国は欠席した。ウクライナは、中国も各国に不参加を働きかけたとしている。世界の分断が露呈したことを憂慮せざるを得ない。
サミット開幕前日には、ロシアのプーチン大統領が「現実的和平堤案」を発表した。
ロシアは交渉に前向きな姿勢を演出したいのだろうが、提案はロシアが一方的に併合した4州からのウクライナ軍の撤収などを求めている。力による現状変更を認めることになり、到底受け入れられるものではない。
参加した新興国などからは、招待しなかったロシアの和平協議への関与を促す意見が相次いだ。
ゼレンスキー氏は、将来的にロシアと交渉する可能性はあると主張している。当事者間の対話が欠かせないことは言うまでもない。国際社会は、その環境づくりに努めてもらいたい。
サミットに先立ちイタリアで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議では、制裁で凍結したロシア資産を活用し、ウクライナ支援に充てることで合意した。少なくとも500億ドル(約7兆8千億円)を提供する。
中国に対し軍民両面で利用可能な物資のロシアへの移転停止を求め、北朝鮮とロシアの軍事協力を「可能な限り最も強い言葉で非難する」とした。
日本はウクライナに非殺傷分野での支援や、ロシアが侵攻を続ける限りの制裁継続を確認した。
息の長い取り組みになるだろう。武力侵攻を認めず、自由と民主主義を守るために、日本をはじめG7各国は不断の努力を続けていくべきだ。