世界文化遺産を目指す「佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の委員会で7月末に審議される。いよいよ登録に向けた最終段階に入ったが、新潟県は広い。佐渡以外の県民の中にはピンとこない人もいるだろう。しかし島外にも、佐渡金山とのつながりを示す史料や伝承が残っている。県内各地で見つけた佐渡金山との意外な縁を紹介する。(5回続きの3)

 商売で佐渡に渡った男が、20〜30年連れ添った婆(ばば)を振り切り故郷に帰る。狂言「佐渡亡魂(ぼうこん)」は、柏崎市女谷(おなだに)地区の2集落に伝わる民俗芸能「綾子舞」の演目の一つだ。

 台詞に「金山」の単語は出てこない。だが、柏崎市立博物館の学芸員渡邉三四一(みよいち)さん(66)は「ゴールドラッシュで沸く江戸時代の佐渡に通じた人物が作ったのだろう」とみる。

 相川金銀山の採掘本格化は1601(慶長6)年。古文書「佐渡年代記」には12(慶長17)年に佐渡に遊女歌舞伎の一行が訪れたとの記述が残り、この頃に作られたと渡邉さんはみる。

2022年の現地公開で6年ぶりに演じられた綾子舞の狂言「佐渡亡魂」=柏崎市女谷

 舞台設定もこの説を裏付ける。...

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