1907年完成の「大日本地名辞書」の原稿が積まれた書棚を前に、写真に収まる43歳の吉田東伍(吉田東伍記念博物館提供)
1907年完成の「大日本地名辞書」の原稿が積まれた書棚を前に、写真に収まる43歳の吉田東伍(吉田東伍記念博物館提供)

 全国4万1千項目もの地名を網羅する地誌「大日本地名辞書」を著した新潟県阿賀野市出身の歴史地理学者、吉田東伍が2024年、生誕160年を迎えた。節目の年に合わせ、先人の業績を振り返る特別展が、新潟と阿賀野の両市で企画されている。多くの研究者や歴史作家の尊敬を集めた東伍の偉業をひもときつつ、吉田東伍記念博物館(阿賀野市保田)の関係者に郷土の偉人への思いを尋ねた。(新発田総局・田中伸)

 大量の原稿用紙が、記念博物館の中央にうずたかく積み上げられている。大日本地名辞書の原稿の山を復元した展示だ。すべてを積み上げると、その高さは約4メートル50センチにも達する。

 初版は1907年に完成。各地の歴史や風土、地名の由来などを、東伍は生き生きとつづった。「安田」(現阿賀野市)の項目では、この地で火災が起こったことをきっかけに人々が縁起を担いで地名を「保田(やすだ)」に変更したとを紹介。「陋習(ろうしゅう)笑うべし」と記している。

 東伍は1864年、旧保田村(現阿賀野市保田)の裕福な...

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