全国的に今夏はコメの品薄感が広がり、価格が上昇した。2024年産の新米が出始めて品薄は解消しつつあるが、新米価格も23年産より高騰している。

 コメは日本人の主食であり、数少ない自給率100%の食料だ。食卓を守るために政府には価格と供給の安定を図ってもらいたい。

 23年産米から切り替わるタイミングでコメの需給が逼迫(ひっぱく)し、品薄状態が続いた。

 背景には年間を通じて在庫量が少ない端境期に、南海トラフ地震臨時情報や大型台風の影響による買いだめ需要が発生したことのほか、インバウンド(訪日客)増加により需要が伸びたことがある。

 23年産米は猛暑で品質が低下し、特にブランド力の高い本県産コシヒカリの1等米比率は、4・7%(24年3月末現在)と過去最低水準に落ち込んだ。

 このため精米の歩留まりが悪化したことも品薄につながった。

 昨年に続き今年も猛暑となったが、農家らの努力もあり、本県の24年産米の直近の作柄概況は「平年並み」となっている。

 わせ品種のこしいぶきは早くも一部の店頭では品薄だというが、主力のコシなど他品種が本格的に店頭に並ぶのはこれからだ。

 消費者には、安心して冷静な対応をしてもらいたい。

 気になるのは、コメの価格だ。

 JA全農県本部が県内の地域農協(JA)に示した24年産米の仮渡し金(1等米、60キロ当たり)は、一般コシが1万7000円、岩船コシ、佐渡コシは1万7300円で、23年産の当初額に比べていずれも3100円上がった。

 生産コストが高止まりする中、昨年不作に苦しんだ農家には、一服感があるのではないか。

 一方、消費者にとっては家計の負担が増す不安がある。生産者と消費者の双方に納得感のある価格になることが望ましい。

 JA関係者には、米価が上がった翌年の作付けが過剰となり、米価が下落するのではないかと懸念する声がある。当面は需給バランスを把握し、的確に見通していくことが官民ともに課題になる。

 これまでのコメ政策は、主食用米の需要減退への対応に力点を置いてきた。主眼は、作りすぎによる値崩れを防ぐことにあった。

 だが近年、気候は劇的に変化している。地球温暖化などで世界的に作物が不足する事態が起きることを想定した政策も欠かせない。

 食料安全保障の観点からは、コメの備蓄のみならず、輸出拡大を図っていくことで、万一、国内で需要が跳ね上がった時の備えにする考え方もあるだろう。

 今回、コメの品薄への対応として、政府備蓄米の放出を求める意見があったが、実施されなかった。大幅に価格が上昇した際の柔軟な活用については、今後も議論を深めていく必要がある。