
ハンセン病問題などの書籍が並ぶ歴史図書館の「藤野文庫」=新発田市中央町4
ハンセン病など人権問題の研究で知られる敬和学園大(新潟県新発田市)元教授の藤野豊さん(71)=神奈川県横浜市=が、退職を機に蔵書約5000冊を新発田市立歴史図書館に寄贈し、一部が「藤野文庫」として公開されている。ハンセン病元患者から託された自分史など貴重な資料も多い。「蔵書に新たな生命が与えられたように感じる」と活用を願っている。
日本近現代史を専門とする藤野さんは、2011年から敬和学園大の教授を務め、2023年3月に退職した。現場主義を徹底し、ハンセン病問題では各地の療養所に隔離された入所者の話に耳を傾けてきた。
理不尽な差別や偏見、子どもをつくらせないよう断種手術を受けさせられた経験…。出産直後に赤ちゃんを目の前で殺されたという女性の証言にも接した。
そうした入所者から書籍を贈られることもあった。自費出版の自分史や文学作品などで、今や入手困難なものも少なくない。学生時代から集めた本と合わせ、大切な蔵書となった。
新潟県内から群馬県草津町の国立療養所栗生(くりう)楽泉園に隔離された人の手記や詩選集もある。社会復帰を阻む差別、故郷と母への思いなど、新潟を追われた県人の人生が刻まれている。
後に憲法違反とされた国の隔離政策の下、ハンセン病の当事者は言葉をなかなか発信できなかった。「生きた証しを残したい。思いを社会に伝えたい」。本に託された願いを、藤野さんはそう代弁する。そんな貴重な書籍を...
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