国立競技場のスタンドに掲げられたビッグフラッグ=2004年4月18日
国立競技場のスタンドに掲げられたビッグフラッグ=2004年4月18日
反町康晴監督とイビチャ・オシム監督
反町康晴監督とイビチャ・オシム監督

後半22分、新潟の森田(左)がJ1初ゴールを決め1点差に迫る=2004年4月18日、国立競技場
後半22分、新潟の森田(左)がJ1初ゴールを決め1点差に迫る=2004年4月18日、国立競技場

   サッカーの“聖地”国立競技場を舞台に11月2日、J1アルビレックス新潟の初タイトルを懸けたYBCルヴァン・カップ決勝が行われます。2003年にJ1昇格を果たした新潟が、J1チームとして初めて国立競技場のピッチに立ったのは2004年4月18日のアウェーゲーム、相手は後に日本代表監督を務めるイビチャ・オシム率いるジェフユナイテッド市原(現市原・千葉)でした。国立にアルビレックスのビッグフラッグが掲げられた歴史に残る一戦を、当時の番記者が紙面に掲載されなかった写真も交えて振り返ります。

国立決戦まであと2日!「てっぺん」直前情報まとめページ

◆新幹線満席は20年前も

 2003年のJ2リーグで川崎、広島との熾烈な優勝争いを制し、悲願のJ1昇格を果たしたアルビレックス新潟。ホームのビッグスワンには4万人を超えるサポーターが詰めかけ、熱狂は最高潮に達していました。

国立競技場へ向かうアルビサポでごった返す新潟駅=2004年4月18日

 市原のホームは市原臨海競技場でしたが、開催地は多くのサポーターを収容できる国立競技場に決定。国立で戦うアルビレックスの姿を一目見ようと、試合当日の新潟駅は朝から、新幹線に乗り込むサポーターたちでごった返し、車内はオレンジ色のユニホームを着たサポーターで満席となりました。 

アルビサポで満席となった新幹線=2004年4月18日

 国立競技場にはホームの市原サポを圧倒する大勢のアルビサポの姿が。聖地にはためくビッグフラッグは壮観の一言でした。

 
 

 

 ◆「考えて走るサッカー」

 市原との一戦に胸を躍らせていたのはサポーターだけではありません。新潟をJ1へと導いた智将・反町康治監督も高揚感を隠せないようでした。

市原戦を指揮する反町康治監督=2004年4月18日、国立競技場

 オシム監督は当時、ボールを持っていない選手を含めてチーム全体が攻守にわたって連動し続ける「考えて走るサッカー」をコンセプトに掲げていました。

 反町監督も、フリーの選手が敵陣に空いたスペースを見逃さずに飛び込んだり、自陣に空いたスペースを素早くカバーする「オフ・ザ・ボール」の動きを何より重視。攻守の切り替えの早さを追求している点も同じでした。

新潟戦を指揮するオシム監督=2004年4月18日、国立競技場

 「選手が次から次へと沸いて出てくるようだ」と市原の機動力を警戒しつつも、「オシム監督との戦いは楽しみだよ」と声を弾ませていた反町監督。

 大歓声に包まれるスタジアムで、いよいよキックオフ。アルビレックス新潟の国立デビュー戦は、サポーターも指揮官も予想だにしなかった波乱の展開が待っていたのです。

〈新潟〉アウェー
▽スターティングメンバー
GK 21 野澤洋輔 
DF 29 喜多 靖
DF 17 安 英学
DF  2 丸山良明
DF 25 宮沢克行
MF 16 寺川能人
MF  8 山口素弘
MF 20 桑原裕義
MF 18 鈴木慎吾
FW  7 栗原圭介
FW 11 上野優作
(ベンチ入りメンバー)
GK  1 木寺浩一
DF 19 三田 光
MF  6 秋葉忠宏
MF 23 深澤仁博
FW 24 森田浩史

〈市原〉ホーム
▽スターティングメンバー
GK 17 櫛野 亮
DF  3 斎藤大輔
DF  5 ミリノビッチ
DF  4 茶野隆行
MF  2 坂本将貴
MF  7 佐藤勇人
MF 15 中島浩司
MF 11 村井慎二
MF 22 羽生直剛
FW 18 巻誠一郎
FW 13 サンドロ
(ベンチ入りメンバー)
GK  1 立石智紀
DF 24 結城耕造
MF 23 楽山孝志
MF 16 山岸 智
FW  9 林 丈統

◆聖地の洗礼、まさかの…

 国立競技場に乗り込んだアルビレックス新潟を待っていたの「聖地の洗礼」でした。

 

 スタジアムの雰囲気にのまれたのか、選手たちの動きは序盤から重く、前半27分、守備が集中力を欠いた一瞬の隙を突かれ、市原のDF茶野隆行にミドルシュートを決められて先制されます。

 
 

 直後の30分には、再びフリーにさせた茶野のクロスをFW巻誠一郎に合わされ、立て続けに失点してしまいます。

 

 「チーム全体で戦わなければならないのに、一人がさぼって失点した。我慢ができなかった」と反町監督。マッチアップした相手をフリーにさせたMF寺川能人を前半31分でベンチに下げたほど怒りをあらわにしました。

◆新潟の逆襲

 しかし、指揮官の荒療治が効いたのか、チームは後半、怒濤の反撃を開始します。

 後半19分にはトップ下のMF栗原圭介に代え、シーズン初のベンチ入りを果たしたFW森田浩史を投入。そのわずか3分後のファーストタッチ、DF宮沢克行からのクロスを頭で合わせ、反撃ののろしとなるゴールを決めました。

後半22分、新潟の森田(左)がJ1初ゴールを決め1点差に迫る=2004年4月18日、国立競技場

 寺川に代わって投入されたMF深澤仁博のドリブル突破など、新潟はその後も、何度もゴールに迫り、試合は前半とは一転して新潟ペース。追いつくことはできませんでしたが、「走るサッカー」を掲げる市原をバテさせたのは、新潟の方でした。

 
 
 

 

◆「2試合やったようだった」

 試合後の記者会見。オシム監督に「新潟は市原と同じ『走るサッカー』をコンセプトにJ1昇格を果たしました。新潟と戦った感想を聞かせてください」と、直接尋ねました。...

残り671文字(全文:2623文字)