江口晃社長
江口晃社長

 新潟県内企業で世代交代や代替わりが相次いでいる。先代の流儀を踏襲しつつも、若い感性で時代を見つめ、新たな領域にチャレンジし、県内経済に新風を吹き込む。他社などでの修業時代に何を学び、経営者として今、どのようにビジネスを展開しているのか。若きトップたちの視座を探った。(8回続きの3)

 「ダシを科学する」という企業理念を掲げてきた業務用だしパック製造のフタバ(三条市)は、江口晃社長(42)が29歳で就任し、一般家庭向けの商品に参入するなど、だしメーカーとして多面的な経営を加速させている。科学的な分析・数値データを用いてそろえた商品数は400種類を超える。「健康で長生きを目指す社会になっていく中で、だしを使った食生活の楽しさを伝えたい」と意欲を示す。

 フタバは祖父が1953年に創業した。子供の頃は家業について「うちはかつお節屋」という程度の認識だったが、中学3年生の時に、いずれ社長を継ぐことが決まった。2代目社長だった父の昇さんが1997年、出張先の中国で交通事故に遭って急逝。親族会議で「会社を継ぐ気持ちはあるのか」と問われ、「やります」と答えた。

 大学卒業後、短期間で自身が成長できそうな就職先として、求人広告を扱う「エン・ジャパン」(東京)に入社した。

求人情報サイトを運営するエン・ジャパン時代の江口晃氏(左・社内報から)

 求人情報サイトに載せる広告を集める担当として、連日100社以上に営業をかけた。広告の提案では応募者の多寡ではなく、いかにいい人材が集まるかを心がけたという。「顧客の将来を見据え、その企業の良さを引き出せるような広告作りをした」と振り返る。

 2年後、叔父が社長を務めていたフタバから呼び戻されて帰郷。2011年に社長に就任した。先代からは「失敗してもいいから大きく挑戦してみろ」と背中を押された。

 ただ、だしに本格的に触れるのは...

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