「ライフへよく行きます。ライフの方が安いので」。公開から6週連続で首位を独走したネットフリックスで独占配信中のドラマシリーズ「地面師たち」。詐欺グループの暗躍を描いたこのドラマで、地主になりすます佐々木老人役を怪演したのが旧水原町(新潟県阿賀野市)出身の俳優五頭岳夫さん(76)だ。SNSでは自然すぎる演技が話題となり、そのせりふにちなみ「ライフの方が安い爺」と、注目を集める。古希を超え、大ブレーク中のバイプレーヤーに、撮影の裏話や今の心境を尋ねた。

地面師たちは豊川悦司さんと綾野剛さんのダブル主演。実際の事件を下敷きに、大根仁監督が脚本も担当した。ピエール瀧さん演じる後藤のせりふ「もうええでしょう」が新語・流行語大賞でトップ10入りするなど、2024年を代表する話題作の一つだ。

五頭さんと大根監督との出会いは10年前、ドラマ「リバースエッジ大川端探偵社」にさかのぼる。「その後、ご一緒したドラマ『ハロー張りネズミ』では、おれの演技にピンときていない様子だった。もう声はかからないと思っていたので、地面師たちの話がきて、うれしかった」
大根監督からは「初めから、佐々木老人役にすると決めていた」と伝えられた。五頭さんを念頭に、脚本を当て書きしたという。

地面師たちで五頭さんが登場するのは、エピソード1のみ。架空の土地取引を巡り、地面師グループが不動産業者との最終決済に臨む場面がクライマックスだ。不動産業者側の司法書士がえとを聞いたり、自宅の写真を選ばせたり、いろいろな質問をして、地主が本人かどうか身分確認を進めていく。
五頭さん演じるにせ地主は司法書士から「お買い物されるご自宅の近くのスーパーはどちらですか」とも聞かれ、答えに窮してしまう。そこに豊川さん演じる地面師のリーダーからイヤホン越しに指示が入る。そしてあのシーン。「ライフの方が安いので」と言葉をつなぎ、切り抜けた。
「『ライフの方が…』は流行語大賞に選ばれると思ったんだけどね。あのシーンは納得のいく演技ができなくて、数回撮り直した。何回目かでイヤホンから豊川さんの声が出て、『ああっー』って驚いてしまい、リアルな演技になった」

お茶をこぼされるときに着用していたズボンは40年間愛用している私物だった。「稽古と衣装合わせのとき、『お茶の色がよく見える』と採用された。(予備用に)スタッフが同じズボンをメーカーから2本取り寄せてくれた。その執念に感心した」
調子に乗った記者が「お買い物されるご実家近くのスーパーは?」と質問。五頭さんは「水原の実家は...