時代の変革期に政治の停滞は許されない。与野党が十分な議論を重ね、妥協点を探りながら政策を確実に前へ進めていかなければならない。

 前提となるのは政治不信の払拭だ。物価は上がり続けている。地方の人口減少は止まらない。国民の目線に立った政治改革の断行と政策の遂行が強く求められている。

 昨年10月の衆院選で自民党と公明党が大敗し、少数与党に転落した。民主党から政権を奪還した2012年以来約12年続いた自民1強政治は終わった。

 安全保障や防衛、原発など国の根幹に関わる重要政策であっても、野党との議論をそこそこに数を頼みにごり押しするようなそれまでと、国政のありようは一変した。

 先般の臨時国会では、補正予算案や法案などを巡って与党が野党の立憲民主党、日本維新の会、国民民主党に譲歩する場面が目立った。

 政策に野党の意見を反映させることは、多様な民意をくみ上げるということでもある。民主主義の観点からすれば歓迎すべきことだ。

 ◆地方の活力取り戻せ

 留意しなければならないのは財政問題だ。国の財政状況は厳しい。野党も政策は財源とセットで検討する必要がある。

 「年収の壁」を引き上げて手取りを増やすような政策は誰もが歓迎するが、財源をどうするかも考えなければならない。

 臨時国会では予算や法律が成立しないといった事態はなかったが、今月始まる通常国会ではどうなるか。与党は丁寧に説明を尽くし、野党も建設的な姿勢で批判や提言をしてほしい。

 自公が少数与党に転落した最大の要因である自民派閥裏金事件はなお実態が不透明だ。企業・団体献金については、存続を主張する自民と禁止を求める立民などが折り合っていない。

 いい加減にしろ、という思いだ。今年は必ず、この問題にけりをつけなければならない。カネのかかる政治の在り方を根本から見直すことも大事だ。

 課題は国内外に山積している。特に私たち地方の住民にとって深刻なのは、人口減少だ。

 石破茂政権は地方創生の推進を掲げる。先月には、若者や女性に選ばれる「楽しい地方」をつくるなどとした「基本的な考え方」をまとめた。

 政府は10年にわたって地方創生に取り組んできたが、東京一極集中が止まらないなど十分な成果は上がっていない。

 地方の活力低下は国力の衰退につながる。改めて難題に正面から立ち向かい、具体的な施策を展開してもらいたい。

 もちろん、地方の側の努力も必要だ。県や市町村、地元企業などが連携し、総力を挙げて対策を進めたい。

 ◆情報の見極めが必要

 多くの国民が物価高に苦しんでいる。経済的な苦境に陥る世帯も多い。困窮世帯で暮らす子どもは全体の1割を超えるという調査もある。

 貧困問題への対応は喫緊の課題だ。困っている人に手を差し伸べることが政治の大事な役割だということを、政治家一人一人が胸に刻んでほしい。

 昨年は選挙と交流サイト(SNS)の関係が注目された年でもあった。衆院選や東京都知事選、兵庫県知事選などでSNSが盛んに活用され、一部ではSNSの情報が結果を左右したともいわれている。

 時代の大きな流れではある。問題はSNSの情報は真偽ないまぜで、意図的な偽情報もあるということだ。

 似たような意見や見解の投稿が頻繁に表示され、得る情報が偏りがちになる。結果として社会に分断を生じさせる危険性も指摘されている。

 SNS時代を生きる私たちに求められるのは、情報の真偽を見極める力を身に付けることだ。誤った情報に踊らされることなく政治の現状を冷静に見つめ、投票行動につなげたい。

 今年は夏に参院選が行われる。新潟選挙区(改選数1)では立民現職の打越さく良(ら)氏、自民新人の中村真衣氏、参政党新人の平井恵里子氏が立候補を予定している。

 昨年の衆院選は立民が県内全5小選挙区で勝ち、自民系は全敗した。参院選は与党が挽回するか、野党が勢いを増すか。

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題も争点の一つになるとみられる。私たちもしっかり目を凝らしていきたい。