高島屋の福袋で販売した、佐渡島プライベート旅行。高額にもかかわらず、多くの申し込みがあった=高島屋横浜店(高島屋提供)
高島屋の福袋で販売した、佐渡島プライベート旅行。高額にもかかわらず、多くの申し込みがあった=高島屋横浜店(高島屋提供)

 新潟県初の世界文化遺産1975年に発効した世界遺産条約に基づき、歴史的建造物や遺跡を対象にユネスコが人類共通の財産として登録する。国内では姫路城などが登録されている。世界遺産にはほかに、貴重な生態系などの自然遺産と、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産がある。登録の可否は世界遺産委員会が決める。佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」の登録決定から、1月27日で半年となった。登録後、観光客数は24年を上回る水準を維持しているが、冬場の集客の難しさも、例年と変わらず浮き彫りになっている。2025年を観光関係者は「勝負の年」と位置づける。登録効果をいかに取り込めるのか。どのように世界の宝を守り、活用していくのか。本格的に動き始めた“世界遺産の島”の今を追う。(2回続きの1)

 2人で2泊3日300万円の「佐渡島プライベート旅行」-。大手百貨店の高島屋(大阪)が、正月に発売した福袋の中で1組限定の目玉企画だ。新潟-佐渡をチャーターヘリで移動し、金山上空の遊覧飛行、専属ガイドが付いた観光、島内屈指の高級ホテルでの宿泊と、非日常感と贅沢(ぜいたく)感を前面に押し出した。

 高島屋が想定したターゲットは富裕層。1月3、4日に東京など13店の店頭で受け付けたところ、高額商品にもかかわらず2桁の応募があったという。担当者は「想定以上の申し込みだった」と驚いた。

 プラン作りには、佐渡市で複数のホテルを経営するサンフロンティア佐渡の北見宗央常務(55)も携わった。

 北見さんは「世界遺産になったことで注目が集まったからこそ、企画の相談が寄せられた」とし、「佐渡はまだまだ可能性がある」と力を込める。

 佐渡市で最大規模の宿泊施設「国際佐渡観光ホテル八幡館」。1月下旬の平日の宿泊客は約40人と、収容数の1割程度だった。

国際佐渡観光ホテル八幡館で、宿泊を申し込む観光客=佐渡市八幡

 多くの観光客でにぎわう春から秋までとは対照的に、冬はビジネスの宿泊や地元の宴会がメインで、この日の観光客は1組2人だった。友人と初めて来島した埼玉県熊谷市の男性(46)は「金山は思ったよりもすいていた」と、やや拍子抜けした様子だった。

 市内外の観光関係者で、登録半年の世界遺産効果は冬を前に一段落したとの認識を持つ人は少なくない。市がまとめた、島民以外の島への入り込み数は、世界遺産登録後の24年8〜12月は前年同期比8・8%増。月別に見ると、8〜11月は7〜12%増で推移したが、12月は2・1%増にとどまった=グラフ参照=。

▽宿泊客数も横ばい…冬季の“壁”高く

 島内の旅館やホテルでの宿泊者数も、入り込み数と同様の動きとなった。「佐渡観光旅館連盟」によると、8〜11月の加盟施設の宿泊数は、前年比約4%増で、12月に限るとほぼ前年並みだった。

 旅行ツアー参加者も冬季は振るわなかった。阪急交通社(大阪)は24年、関西発のコースを24年の2倍以上の10コース用意。登録決定後11月までは例年を上回る集客だったが、12月は延長した2コースへの申し込みがなかった。担当者は「スキー場などを除き、冬場の旅行は...

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