「佐渡を世界遺産にする会」などが主催する恒例の古道トレッキング。登録後は例年を上回る申し込みがあった=2024年10月、佐渡市
「佐渡を世界遺産にする会」などが主催する恒例の古道トレッキング。登録後は例年を上回る申し込みがあった=2024年10月、佐渡市

 新潟県初の世界文化遺産1975年に発効した世界遺産条約に基づき、歴史的建造物や遺跡を対象にユネスコが人類共通の財産として登録する。国内では姫路城などが登録されている。世界遺産にはほかに、貴重な生態系などの自然遺産と、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産がある。登録の可否は世界遺産委員会が決める。佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」の登録決定から、1月27日で半年となった。2025年を観光関係者は「勝負の年」と位置づける。登録効果をいかに取り込めるのか。どのように世界の宝を守り、活用していくのか。本格的に動き始めた“世界遺産の島”の今を追う。(2回続きの2)

 1月27日夜、佐渡市佐和田地区にある市民団体「佐渡を世界遺産にする会」の事務所に会員たちが集まった。開かれていたのは、会の今後の在り方を検討してきたメンバーによる中間報告会。現在の会を解散し、市民有志として新たな組織を立ち上げる大きな方向性が示された。

 2007年に発足した同会は現在個人約1200人、法人約210団体を抱える。イベントなどを通じ、世界文化遺産の登録実現に向けた理解促進や機運醸成の取り組みを続けたほか、構成資産の草刈りや清掃など活動は多岐にわたった。24年秋に初めて開催された金山の労働者の追悼式で実行委員会の構成団体に名を連ねるなど、常に世界遺産に関わる活動の中心にいた。

 かつて国連教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長を務め、国内外の世界遺産を知る松浦晃一郎さん(87)は「佐渡は長年、民間がイニシアチブをとってきた。日本の中でも一番だ」と断言する。しかし、その牽引(けんいん)役が登録後、方向性を明確に打ち出せないまま半年が経過していた。

佐渡を世界遺産にする会が主催した古道トレッキング。開会式でメンバーがあいさつした=2024年10月、佐渡市

▽「世代交代」巡る曲折

 「新組織の会員がどの程度集まるのか」「行政の支援はどうなるのか」。会の活動の中心は70代で、世界遺産登録後のモチベーションの低下は否めない。「世代交代を進めるべきだ」との意見もあり、これまでなかなか方針が固まらなかった。

 新年度を控え、今後の在り方を会員に周知するタイミングが迫っていた。新組織に関しては今後も検討を続け、会員の意見を踏まえて最終的に決めることにした。1月27日の会合で目立った異論は出なかった。

 中野洸会長(83)は「ここまで一生懸命頑張ってきて、みんなが会への思い入れがある。会員には新組織に参加してもらいたいし、...

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