
竹の裏ごしを作る曲物職人の足立照久さん=長岡市寺泊山田
丸く曲げた木の板を使って作る「曲物(まげもの)」は、新潟県長岡市寺泊山田集落に受け継がれてきた逸品で、県の伝統工芸品に指定されている。調理道具などとして使われており、その一つが、竹で編んだ網を張った「竹の裏ごし」。あんこを通してそぼろ状にする道具で、県内外の和菓子職人らに支持されている。しかし、近年は竹の網の入手が困難となっており、集落ただ一人の職人が「昔からの製品を守りたい」と、確保に向けて奔走している。
トントン、トントン。薄い木の板を曲げた「曲輪」で作った枠を、木の棒でたたき、竹の網を張っていく。
「私の仕事は一人ではできない。曲輪を作る人、竹の網を作る人など、多くの人の仕事の上に成り立っている」。集落でただ一軒、伝統を継承する「足立茂久商店」11代目の足立照久さん(50)は語る。
ふるい、せいろ、わっぱといった曲物は、さまざまな材料を組み合わせて形にしていく。だが、近年は材料が手に入りにくい事態に見舞われているという。竹の裏ごしを作るために使う竹の網も同様だ。
竹の網は、竹の産地として知られる大分県から仕入れていた。だが、職人が高齢で網を編めなくなり、仕入れは5年前が最後となり、現在はわずかな在庫が残るだけとなった。
「必要とされている以上、なんとか作り続けたい」。足立さんは、竹だけでも購入できないかと考え、大分県の業者に相談。だが、...
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